コラム「【保存版】AIで作成した契約書はそのまま使って大丈夫?弁護士が徹底解説|企業が知るべきリスク・チェックポイント・安全な活用方法(第1回)」

はじめに

近年、ChatGPTをはじめとする生成AIの急速な普及により、契約書の作成やチェックにAIを活用する企業が急増しています。

「AIなら数分で契約書を作ってくれる。」
「顧問弁護士に依頼する前にAIで確認すれば十分では?」

そのように考える経営者や担当者の方も少なくありません。

確かに、AIは契約書作成を効率化する非常に優れたツールです。実際、契約書のたたき台を短時間で作成したり、文章表現を改善したりする場面では、大きな力を発揮します。

しかし、その一方で、AIが作成した契約書を十分な確認をしないまま利用した結果、企業が予想外の法的リスクを負ってしまう可能性もあります。

契約書は、単に「法律的に間違っていない文章」を作るものではありません。

契約書の本来の役割は、

  • 将来起こり得る紛争を予防すること
  • 自社の利益を守ること
  • 万一トラブルになった際のルールを明確にすること

にあります。

AIは一般的な契約書を作成することは得意ですが、「あなたの会社にとって最も適切な契約内容」を判断することまではできません。

本コラムでは、企業法務を数多く取り扱う弁護士の視点から、

  • AIで契約書を作るメリット
  • AI契約書に潜むリスク
  • AIが特に間違えやすい契約条項
  • 安全にAIを活用するためのポイント

について、実務に沿って詳しく解説します。


このコラムで分かること

本コラムをお読みいただくと、次のような点をご理解いただけます。

✓ AIで契約書を作成するメリット

✓ AIだけに頼ることの危険性

✓ AIが見落としやすい契約条項

✓ 契約書レビューを弁護士へ依頼するメリット

✓ AIを安全に業務へ活用する方法


AIで契約書を作成するメリット

まずは、AIのメリットを正しく理解しましょう。

AIは決して「危険なもの」ではありません。

むしろ、適切に利用すれば、企業活動を大きく効率化できる優れたツールです。

① 契約書を短時間で作成できる

例えば、

  • 売買契約書
  • 業務委託契約書
  • 秘密保持契約書(NDA)
  • 雇用契約書
  • フリーランスとの契約書
  • 金銭消費貸借契約書
  • 利用規約

など、多くの契約書について、AIは数分程度でひな型を作成できます。

ゼロから作る場合と比較すると、大幅な時間短縮につながります。

② 契約書の「たたき台」として非常に優秀

実務では、契約書は何度も修正を重ねながら完成させます。

AIは、

  • 条項の追加
  • 条項の整理
  • 表現の修正
  • 難しい文章を分かりやすくする

といった作業を得意としており、「たたき台」を作るツールとしては非常に有効です。

③ 契約書の比較・要約ができる

AIは、

「この契約書のポイントを教えてください。」

「前の契約書との違いを説明してください。」

といった依頼にも対応できます。

契約内容を素早く理解するための補助ツールとして活用できるでしょう。

④ 社内教育にも活用できる

新人社員に契約書の基本を学んでもらう際にも、AIは有効です。

例えば、

  • 契約条項の意味
  • 専門用語の説明
  • 契約書の読み方

などを分かりやすく説明してくれるため、法務教育の補助ツールとしても利用できます。


AI契約書の5つのリスク

AIは便利なツールですが、契約書をそのまま信用することには大きなリスクがあります。

ここでは代表的な5つのリスクをご紹介します。


リスク① 法律的には正しくても、自社に不利な契約になることがある

これは最も多いケースです。

AIは「一般的な契約書」を作ることはできます。

しかし、

  • 売主なのか買主なのか
  • 発注者なのか受注者なのか
  • 元請なのか下請なのか

によって、望ましい契約内容は大きく変わります。

例えば、損害賠償条項一つをとっても、

「損害賠償責任に上限を設けるべきか」

「逸失利益を除外すべきか」

といった判断は、会社の立場や取引内容によって異なります。

AIは一般論を提示することはできますが、自社にとって有利な条件を設計することまではできません。


リスク② 最新の法改正や裁判例が反映されていないことがある

AIの回答は、利用するサービスや設定によって異なります。

そのため、

  • 最新の法改正
  • 新しい裁判例
  • 実務の運用変更

が十分に反映されていない可能性があります。

例えば、

  • 個人情報保護法
  • フリーランス・事業者間取引適正化等法
  • 労働関係法令

などは改正や実務の変化が比較的多い分野です。

最新の法令や実務を前提としているかどうかは、必ず確認する必要があります。


リスク③ 業界特有の事情を理解していない

建設業には建設業の、

IT業界にはIT業界の、

医療には医療の、

それぞれ特有の商慣習があります。

例えば、

  • システム開発
  • 建築工事
  • 医療機器
  • フランチャイズ契約

などは一般的な契約書では対応できないケースも少なくありません。

業界特有のリスクを踏まえた契約書であるかどうかは、人による確認が欠かせません。


リスク④ 情報漏えいにつながるおそれがある

AIへ契約書を入力する際には、

  • 顧客名
  • 価格
  • 技術情報
  • 営業秘密
  • 個人情報

などが含まれていないか十分注意する必要があります。

AIサービスによっては入力データの取扱いが異なるため、利用規約や社内ルールを確認せずに重要情報を入力することは避けるべきです。


リスク⑤ AIの回答を過信してしまう

AIの文章は非常に自然で説得力があります。

しかし、もっとも危険なのは、

「AIが言っているから大丈夫だろう」

という思い込みです。

AIは法律上の責任を負いません。

契約を締結した結果について責任を負うのは、あくまでも契約当事者です。

だからこそ、AIを便利な「補助ツール」として活用しつつ、重要な契約では専門家による確認を受けることが重要になります。


AIが特に間違えやすい契約条項10選

AIは契約書全体の構成を整えることは得意ですが、企業にとって重要な条項ほど一般的な内容にとどまりがちです。

次の表は、実務上、特に注意が必要な契約条項をまとめたものです。

契約条項AIが見落としやすいポイント起こり得るリスク
損害賠償責任の範囲や上限額の設定が不十分高額な損害賠償請求を受けるおそれ
契約解除解除事由や解除手続が曖昧一方的に契約を解除されるリスク
支払条件支払期限や遅延損害金の定めが不十分売掛金の回収が困難になる
知的財産権著作権・成果物の帰属が曖昧成果物を自由に利用できなくなる
秘密保持秘密情報の範囲や例外が不明確営業秘密が十分に保護されない
再委託再委託の条件が定められていない品質低下や情報漏えいにつながる
反社会的勢力条項条項が簡略化されている問題が発覚しても契約解除が難しい
個人情報保護法令や実務に即した内容になっていない法令違反や信用失墜につながる
不可抗力想定する事由が限定されていない災害やシステム障害時の責任が不明確
合意管轄自社から遠方の裁判所が指定されている訴訟対応の負担・費用が増大する

これらは一見すると細かな条項に思えるかもしれません。しかし、実際に紛争が発生した際には、企業の損失や対応コストを大きく左右する重要なポイントです。

そのため、AIが作成した契約書を利用する場合でも、「条文があるかどうか」だけでなく、「自社の実情に合った内容になっているか」という視点で確認することが不可欠です。


第1回のまとめ

AIは、契約書作成を効率化する非常に優れたツールです。

一方で、AIはあくまでも一般的な契約書を作成するものであり、自社の立場や業界特有の事情、将来起こり得る紛争まで考慮して契約内容を設計することはできません。

そのため、AIは「契約書を作るための補助ツール」として活用し、重要な契約については、弁護士による確認を受けることが、企業のリスクを最小限に抑える近道といえるでしょう。

次回(第2回)では、AIで作成した契約書が原因で起こり得る具体的なトラブル事例や、企業が整備しておきたいAI利用ルール、弁護士が契約書をチェックする際のポイントについて詳しく解説します。

企業法務についてはこちら

顧問弁護士についてはこちら

keyboard_arrow_up

05055279898 問い合わせバナー 無料法律相談について