コラム「【保存版】AIで作成した契約書に潜む落とし穴とは?実際に起こり得るトラブル事例と企業が整備すべきAI利用ルール(第2回)」

はじめに

前回のコラムでは、ChatGPTなどの生成AIを利用した契約書作成のメリットと、AIだけに頼ることのリスクについて解説しました。

AIは契約書作成を効率化する非常に便利なツールですが、「AIが作ったから安心」というわけではありません。

実際には、契約書はトラブルが起きたときにはじめて、その内容の重要性が明らかになります。

本コラムでは、AIで作成した契約書で実際に起こり得るトラブル事例を紹介するとともに、企業がAIを安全に活用するためのルール作りや、弁護士が契約書をチェックする際にどのような点を確認しているのかを解説します。


ケース1 損害賠償責任が無制限だった

ある会社では、AIを利用して業務委託契約書を作成し、そのまま取引先と契約を締結しました。

契約締結当初は問題なく取引が進んでいましたが、納品後にトラブルが発生し、多額の損害賠償を請求されることになりました。

契約書を確認すると、損害賠償責任の上限を定める条項がありませんでした。

結果として、会社は本来想定していなかった範囲まで責任を負う可能性が生じました。

弁護士ならどう確認するか

契約金額や業務内容、取引関係などを踏まえ、

  • 賠償責任の上限
  • 特別損害・逸失利益の取扱い
  • 間接損害の除外

などを検討し、企業に過大なリスクが生じないよう条項を調整します。


ケース2 成果物の権利が相手方に帰属してしまった

システム開発契約やホームページ制作契約では、成果物の著作権や利用権が重要になります。

AIが作成した契約書では、知的財産権の条項が一般的な表現にとどまることがあります。

その結果、

「制作費を支払ったのに自由に利用・改変できない」

という事態が起こる可能性があります。

弁護士ならどう確認するか

  • 著作権の帰属
  • 利用許諾の範囲
  • 二次利用の可否
  • ソースコードやデータの引渡し

など、契約の目的に応じて具体的に条項を整備します。


ケース3 秘密保持契約(NDA)が会社を守れていなかった

AIで作成した秘密保持契約書は、一見すると十分な内容に見えることがあります。

しかし、

  • 秘密情報の定義が曖昧
  • 契約終了後の義務が定められていない
  • 例外規定が不十分

など、実際の紛争時には十分な保護を受けられない内容になっていることもあります。

営業秘密や顧客情報を取り扱う企業では、特に慎重な確認が必要です。


AIに契約書を読み込ませる前に確認したいチェックポイント

AIへ契約書を入力する前に、次の点を確認しましょう。

  • 顧客名や担当者名などの個人情報が含まれていないか
  • 営業秘密や技術情報が記載されていないか
  • 未公表の価格や取引条件が記載されていないか
  • AIサービスの利用規約や情報の取扱いを確認したか
  • 社内ルールに従った利用となっているか

「契約書の内容」だけでなく、「AIへ入力する情報」についてもリスク管理が必要です。


企業が整備しておきたいAI利用ルール

生成AIを業務で利用する企業では、AI利用ルールを定めることをおすすめします。

例えば、次のような事項を定めておくとよいでしょう。

① AIへ入力してはいけない情報

  • 顧客情報
  • マイナンバーなどの個人情報
  • 営業秘密
  • 技術情報
  • 未公開の契約条件

② AIで作成した契約書の確認体制

  • 作成者だけで完結させない
  • 上長による確認
  • 重要な契約は弁護士がレビュー

③ 利用できるAIサービス

利用するAIサービスを限定し、利用規約やセキュリティを確認した上で運用することも重要です。

④ 社員教育

AIのメリットだけでなく、情報漏えいリスクや著作権、個人情報保護などについて、継続的な教育を行うことも欠かせません。


弁護士はAI契約書のどこをチェックしているのか

「AIで作った契約書をチェックしてください」とご相談をいただいた場合、弁護士は単に誤字脱字や法律用語を確認するわけではありません。

例えば、次のような点を重点的に確認します。

  • 自社に不利な条項はないか
  • 想定される紛争に対応できる内容か
  • 責任の範囲が適切か
  • 契約解除の条件は明確か
  • 代金回収に支障はないか
  • 知的財産権は適切に整理されているか
  • 個人情報保護や法令に適合しているか
  • 業界特有のリスクに対応しているか

契約書は「法的に間違っていない」だけでは十分ではありません。

会社を守る契約書になっているかどうかが最も重要です。


AIと弁護士は「競合」ではなく「補完関係」

「AIがあるから弁護士はいらない」という考え方もあります。

しかし、実際にはAIと弁護士は役割が異なります。

AIは契約書作成の効率化を得意とし、弁護士は契約書を通じたリスク管理や紛争予防を担います。

AIを活用して作業時間を短縮し、そのうえで重要な契約は弁護士が最終確認するという組み合わせが、企業にとって最も合理的な方法といえるでしょう。


まとめ

生成AIは、契約書作成を効率化する強力なツールです。

しかし、契約書は会社の利益や将来の紛争リスクを左右する重要な文書です。

AIが作成した契約書をそのまま利用するのではなく、AIを「たたき台」として活用し、重要な契約については弁護士が内容を確認することで、企業の法的リスクを大きく減らすことができます。

結の杜総合法律事務所へご相談ください

結の杜総合法律事務所では、AIを利用して作成した契約書のレビューや契約書作成、企業法務全般に関するご相談を承っています。

また、代表弁護士は税理士資格を有し、税理士事務所を併設しているため、契約内容だけでなく税務面も踏まえた総合的なアドバイスが可能です。

AIを安心して業務に活用したい企業の皆さまを、法務・税務の両面からサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。


次回予告

第3回では、「弁護士はAIが作成した契約書のどこをチェックしているのか?」をテーマに、契約書レビューの具体的なポイントや、AIが見落としやすい契約条項を詳しく解説します。

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