コラム「【消滅時効の完成猶予と更新とは?】― 催告6か月の落とし穴と、確実に時効を止める方法を弁護士が解説 ―」

1 時効が迫っている!どうすればよいか?

「売掛金を整理していたら、消滅時効まであと3か月しかない債権が見つかった」
「請求書は送っているが、法的手続はしていない」
「催告を出せば安心だと思っている」

このようなご相談は、企業法務・債権回収の現場で非常に多く見られます。

✅ 結論

  • 催告(内容証明郵便など)だけでは6か月しか延命できません
  • 6か月以内に訴訟・支払督促等をしなければ時効は完成します
  • 確定判決等を取得して初めて「時効の更新(リセット)」が生じます

本記事では、改正民法(令和2年施行)に基づく「完成猶予」と「更新」の違いを、実務目線でわかりやすく解説します。


2 改正民法で何が変わった?「中断」はなくなった

平成29年改正民法により、従来の

  • 時効の「中断」
  • 時効の「停止」

という用語は廃止され、次の2つに整理されました。

用語意味効果
完成猶予一定期間、時効が完成しない時効は進行中
更新時効がゼロから再スタート完全リセット

👉 実務上、最も重要なのは「猶予」と「更新」の違いを誤解しないことです。


3 時効の「完成猶予」とは?

(1)催告(民150条)

もっとも多いのが「裁判外の催告」です。

  • 内容証明郵便などで請求
  • 効果:6か月間のみ時効完成をストップ

⚠ 注意
再度の催告には完成猶予の効力はありません(民150②)。

つまり、

催告 → 6か月以内に訴訟等をしない → 時効完成

となります。

「催告すれば安心」は大きな誤解です。


(2)仮差押え・仮処分(民149条)

  • 手続終了後6か月間のみ完成猶予
  • それ自体では「更新」にならない

⚠ 保全手続をしただけで安心していると、時効が完成する危険があります。


(3)裁判上の請求・支払督促等(民147条)

以下の手続を取ると、

  • 手続終了まで時効は完成しない
  • 却下・取下げの場合は終了から6か月猶予

対象例:

  • 訴訟提起
  • 支払督促
  • 調停
  • 即決和解
  • 破産手続参加

(4)強制執行等(民148条)

  • 強制執行
  • 担保権実行
  • 財産開示手続
  • 第三者からの情報取得

も同様の扱いです。


4 時効の「更新」とは?(完全リセット)

更新とは、

時効期間がゼロから再スタートすること

をいいます。


(1)確定判決等の取得(民147②)

裁判上の請求により、

  • 確定判決
  • 和解調書
  • 認諾調書
  • 調停調書
  • 仲裁判断確定

などで権利が確定すると、時効は更新します。

さらに重要なのは、

✅ 更新後の時効期間は原則10年(民169条)

となる点です。


(2)強制執行終了時(民148②)

強制執行が通常終了すれば更新します。


(3)債務の承認(民152条)

  • 一部弁済
  • 債務承認書の提出
  • 分割払い合意

などは直ちに更新事由になります。

🔎 最高裁令和2年12月15日判決

弁済充当指定のない一部弁済は、原則として全債務の承認となると判断。


5 実務で特に注意すべきポイント

① 催告だけでは不十分

→ 6か月以内に訴訟等が必須

② 保全手続は更新にならない

→ 本案提起を忘れると危険

③ 一部請求の残部に注意

→ 残部の時効が完成する可能性あり(最判平成25年6月6日)

④ 時効の効力は相対的

→ ただし、主債務者と保証人の関係に注意(民457条)


6 企業法務・債権回収での実践対応

次のような場合は、すぐに弁護士へ相談すべきタイミングです。

  • 売掛金の時効が迫っている
  • 取引先が支払いを先延ばしにしている
  • 催告だけで様子を見ている
  • 一部請求で提訴を検討している
  • 仮差押え後の対応に不安がある

時効が完成してしまえば、原則として請求できなくなります。

早期対応が最大のリスク回避策です。


7 まとめ

行為完成猶予更新
催告〇(6か月)
仮差押え
訴訟提起確定で〇
強制執行終了で〇
承認

👉 確実に時効を止めたいなら「更新」まで到達することが重要です。


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