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コラム「遺産分割において不動産の評価額はどのように決まるのか?【弁護士・税理士が解説】」

2025-07-11

相続財産に不動産が含まれている場合、その「評価額」をめぐって相続人間で争いが生じることは少なくありません。不動産の評価方法には複数あり、評価額の違いが遺産分割の公平性に大きく影響するからです。

本コラムでは、相続における不動産の評価方法について、法律・税務の両面から解説します。不動産の公的評価基準や実務でよく使われる評価方法、裁判所での扱いなどを知ることで、トラブルを避けた円満な遺産分割に役立てていただけます。


1. 相続における不動産の評価方法とは?

遺産分割の際、不動産の評価額をどう決めるかは極めて重要なポイントです。評価額によって、各相続人が取得する財産の公平性が左右されます。

不動産の評価には主に次のような方法があります。


2. 不動産の公的評価基準とは?

(1)公示価格(こうじかかく)

  • 国土交通省が毎年公表する、特定の標準地の価格。
  • 不動産鑑定士による評価をもとに、正常価格として設定される。
  • 取引価格の指標や公共事業の算定基準となる。

ただし、公示価格は「標準地」に基づくため、個別の不動産の特殊事情を反映できないという限界があります。

(2)固定資産税評価額

  • 市町村が定める土地・建物の評価額で、課税の基準として利用される。
  • 公示価格の約70%が目安。
  • 3年に1回の評価替えであるため、地価変動に対するタイムラグが発生します。

(3)相続税評価額(路線価)

  • 国税庁が公表する「路線価」または「倍率方式」によって算定。
  • 毎年見直されており、地価の変動を比較的正確に反映
  • 相続税の申告実務でもよく使われるため、実務上、最も合意が得られやすい方法です。

3. 公的評価基準以外の評価方法

(1)不動産業者による査定

  • 不動産業者が提示する想定売却価格。
  • 無料で入手しやすい一方、客観性や公平性に疑問が残ることも。

(2)家事調停委員の専門意見

  • 裁判所の調停手続で、不動産鑑定士資格を持つ委員が意見を述べる制度。
  • 一定の専門性と客観性はあるが、現地調査を行わない点で精緻さに限界があります。

(3)私的鑑定

  • 当事者が不動産鑑定士に依頼して実施する鑑定。
  • 鑑定評価基準に従って行われれば、最も客観的で信頼性が高い方法といえます。
  • タイトルが「鑑定書」ではなく「意見書」や「査定書」の場合は注意が必要です。

4. 不動産評価額に関する合意と裁判所の判断

(1)合意できる場合

評価額は法的に絶対的なものではなく、相続人間の合意で自由に決められます。例えば、公示価格と固定資産税評価額の中間を取る、といった柔軟な調整も可能です。

(2)合意できない場合の扱い(分割方法別)

・換価分割(売却して現金化)

評価額は問題にならず、売却金額を分け合う。

・現物分割(不動産を誰かが取得)

不動産同士の相対的な評価が分かればよく、必ずしも鑑定は不要です。

・代償分割(取得者が他の相続人に金銭を支払う)

不動産の絶対的な価値が必要となるため、鑑定が必要です。


5. 裁判所が行う不動産鑑定のポイント

(1)評価時点の選定

  • 通常、遺産分割時点の価格を基準に鑑定。
  • 寄与分・特別受益がある場合は、相続開始時と遺産分割時の両方の鑑定が必要です。

(2)前提条件の確認

  • 鑑定の精度は「前提条件」で左右されます。
    • 抵当権の有無
    • 建物や借地権の影響 など
  • 鑑定前に当事者と裁判所がしっかりすり合わせることが重要です。

6. 鑑定書の信用性を確認するには?

不動産鑑定士が作成する書面のうち、タイトルが「鑑定書」であれば鑑定評価基準に基づく信頼性の高い資料といえます。

一方、「査定書」「意見書」「評価書」と記載されている場合は、簡易的な内容であることが多く、信用性が相対的に低い可能性があるため注意が必要です。


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コラム「遺産分割はやり直すことができるのか?〜弁護士・税理士が法律と税務の両面から解説〜」

2025-07-04

1. 遺産分割協議のやり直しは可能か?

遺産分割協議は、相続人全員の合意により成立します(民法907条1項)。そして、いったん成立した遺産分割協議には相続開始時に遡る効力(遡及効)が生じます。

しかし、共同相続人全員の合意があれば、その協議を解除し、新たに遺産分割協議をやり直すことも可能です。最高裁平成2年9月27日判決でも、その旨が明確に認められています。

ただし、やり直しには法律上の注意点も多く、慎重な対応が求められます。

【ポイント】

  • 全相続人の合意が前提
  • 当初の協議を「解除」したうえで新たに協議する形になる
  • 登記や税務上の影響に注意が必要

2. やり直しの遡及効が制限される場合とは?

遺産分割協議の結果は相続開始時に遡りますが、その効力が第三者に影響を及ぼす場合には制限されることがあります(民法909条)。

たとえば、最初の協議によって不動産を取得した相続人がそれを第三者に売却した後、やり直しの協議で別の相続人に帰属させた場合、第三者の権利を不安定にさせることになります。そのようなケースでは、遡及効は制限されます。

3. 遺産分割のやり直しが必要となるケース

(1)新たな事情が判明した場合

遺産分割後に新たな相続財産が見つかった、または当初の協議内容に不満や疑義が生じた場合など、協議をやり直すことで問題解決を図ることができます。

※当初の協議書に「新たな財産が見つかった場合は○○が取得する」と記載しておけば、やり直しの手間を省けます。

(2)当初の協議に無効や取消しの原因がある場合

相続人の一部が協議に加わっていなかった、または意思能力を欠いていた場合などは、協議自体が無効または取り消される可能性があります。

この場合、新たな協議を行っても「贈与」とみなされず、税務上も相続として扱われます。

(3)無効ではないが合意解除によってやり直す場合

協議自体は有効であるものの、相続人全員の合意により解除して再協議を行うことも可能です。ただしこの場合、新たな財産の移転が贈与や交換と扱われる可能性があり、相続税ではなく贈与税が課税されることがあります。

この点については、以下の裁判例も重要です:

  • 最判平成13年6月14日:再協議により代償債務が発生し、財産を無償移転する場合は「贈与」とみなされ得る。
  • 最判昭和62年1月22日:相続税の負担調整のためのやり直しについては「相続による取得」と判断し、不動産取得税の非課税が認められた。

4. 税務上の注意点

遺産分割のやり直しは、法的には可能ですが、税務上の取扱いが大きく異なる点に注意が必要です。

  • 合意解除による再協議 → 贈与税の対象になることも
  • 無効・取消しの原因がある場合 → 更正の請求や修正申告により対応

相続税や贈与税の負担の違いは非常に大きいため、法的な判断だけでなく、税務的な検討も欠かせません。


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コラム「離婚する際、親権者はどのような基準で決まる?弁護士が徹底解説」

2025-06-27

離婚に際して、父母どちらが子どもの親権者になるかで悩んでいる方も多いでしょう。特に両親が親権を譲らない場合、最終的には離婚訴訟で決着をつけることになります。その際、親権者はどのような基準で決まるのでしょうか? 本コラムでは、親権者・監護権者の決定に関する法律的な基準を解説します。


1. 現行法における親権者・監護権者の指定基準

離婚時に親権者を指定する際、まずは父母の協議で決定されます(民法第819条1項)。協議がまとまらない場合や協議できない場合、家庭裁判所による調停または審判で決定されます(家事手続第39条・第244条・別表第2)。裁判による離婚の場合、裁判所が親権者を定めます。親権者・監護権者は子どもの利益を最優先に考慮して選ばれるべきです。


2. 親権者・監護権者指定の基準

親権者や監護権者を指定する際には、子どもの利益を最優先に判断することが最も重要です。これは民法第766条・第819条で定められており、以下のような要素を総合的に考慮して判断されます。

  • 父母側の事情
    • 監護能力、経済的・精神的家庭環境
    • 子どもの教育環境や居住環境
    • 愛情の深さ、過去の監護状況
  • 子どもの側の事情
    • 年齢、性別、発育状況
    • 子ども自身の意向
    • 父母や親族との関係性

また、不貞行為が親権者の適格性に影響するかについては、不貞行為が直接的に親権者の指定に影響することは少なく、実際に子どもの監護に悪影響を及ぼしていることが証明される場合に限り、親権者として不適当とされることがあります。


3. 親権者・監護権者指定で重視される事情

親権者を決定する際に重視される主な事情は次の通りです:

  1. 現状の尊重(継続性)
    現在子どもを監護している親権者が引き続き監護を行うべきという原則です。特段の事情がない限り、現状を維持することが基本とされています。
  2. 母親の優先
    乳幼児の場合、母親が優先されることが一般的です。しかし、父親でも適切な監護能力がある場合や母親が不適格な場合は、父親が親権者となる可能性もあります。
  3. 子どもの意思の尊重
    子どもが15歳以上の場合、その意思が強く反映されるべきですが、10歳以上であれば子どもの意見も考慮されることが多いです。
  4. 兄弟姉妹の不分離
    兄弟姉妹が可能な限り一緒に監護されることが望ましいとされますが、子どもの年齢が上がるとこの基準は後退します。
  5. 面会交流の許容性
    相手方と子どもとの面会交流が適切に行われることも、親権者を決める際に有利に働くことがあります。

4. 親権に関する民法改正

令和6年5月17日に成立した民法改正(令和6年法律33号)により、親権に関する規定が大きく変更されました。改正後のポイントは以下の通りです:

  1. 親権共同行使の原則と例外
    親権は基本的に父母共同で行使されますが、父母の一方が親権を行使できない場合や子どもの利益のために急迫の事情がある場合は、単独親権となることがあります。
  2. 離婚後の親権者
    協議離婚の場合、父母の合意により親権者を決定できます。共同親権を選択することも可能となり、親権者が一方のみの場合でも、家庭裁判所は子どもの利益を最優先に考慮して決定します。

離婚問題でお悩みの方へ

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コラム「【弁護士解説】交通事故で負った後遺障害による逸失利益とは?」

2025-06-13

交通事故による損害賠償請求を行う際、「後遺障害」や「逸失利益」という言葉を耳にすることがあります。しかし、それがどのような意味を持ち、どのように計算されるのか、詳しくご存じない方も多いのではないでしょうか。

このコラムでは、交通事故の後遺障害と、それによって生じる逸失利益について、交通事故に強い弁護士がわかりやすく解説いたします。


1. 後遺障害による逸失利益とは?

後遺障害とは、交通事故によるケガの治療が終了(症状固定)した後も残ってしまう、身体や精神の障害のことです。例えば、「むちうち症による首の可動域制限」や「足の関節の変形」などが該当します。

一方、逸失利益とは、本来であれば将来得られたはずの収入を、後遺障害によって得られなくなってしまった損害のことをいいます。

つまり、「後遺障害による逸失利益」とは、後遺障害が原因で労働能力が低下し、将来的に得られるはずだった収入が減少したことによる損害を指します。


2. 後遺障害等級の認定とその重要性

(1)後遺障害の認定手続

後遺障害による賠償請求を行うためには、まず後遺障害等級認定を受ける必要があります。これは自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)を通じて行われます。

主な認定方法は以下の2つです:

  • 事前認定:加害者側の保険会社が手続きを代行する方法
  • 被害者請求(自賠16条請求):被害者自身が申請する方法

認定は、損害保険料率算出機構の調査事務所が行い、障害の程度に応じて等級(1級~14級)が付されます。

なお、自覚症状のみで他覚的所見(MRIやレントゲンなどの医学的裏付け)がない場合は、等級認定が難しいのが実情です。

(2)後遺障害の認定時期

後遺障害の認定は、症状固定と医師から診断された時点で初めて可能になります。症状固定後は、治療費が保険会社から支払われないことが多く、損害賠償請求のフェーズへ移行する重要なタイミングです。


3. 後遺障害による逸失利益の考え方と計算方法

(1)逸失利益の考え方

逸失利益の捉え方には2つの説があります:

  • 差額説:事故前後の収入の差を損害とする考え方
  • 労働能力喪失説:労働能力が失われたこと自体を損害とする考え方

裁判例では基本的に差額説を採用しており、収入の減少がなければ損害が認められない場合があります。

(2)裁判例における判断

たとえば、最高裁昭和42年11月10日判決では、「実際の収入が減っていなければ逸失利益は認められない」との判断が示されています。逆に、後遺障害があっても、努力により収入減が生じていないケースでは損害が否定される傾向があります。


(3)後遺障害による逸失利益の計算方法

実務では、以下の計算式が用いられます:

基礎収入 × 労働能力喪失率 × ライプニッツ係数(就労可能年数に対応)

基礎収入

原則として事故前の年収を基準にしますが、被害者の年齢・学歴・職歴に応じて賃金センサスの平均賃金が基準とされることもあります。

労働能力喪失率

等級ごとの目安に従い、被害者の職業や年齢、症状の程度を考慮して定めます。

労働能力喪失期間

通常は症状固定日から67歳までとされますが、症状が軽い場合やむちうち症(頚部捻挫)では、5年〜10年程度に限定されることもあります。

中間利息控除

将来の損害を現在価値に引き直すための係数で、「ライプニッツ方式」が主に用いられています。


4. 逸失利益の認定が難しいケースと弁護士の重要性

後遺障害が残っても、実際の減収が確認できなければ逸失利益が認められない可能性があります。特にむちうち症のように外見から症状がわかりづらいケースでは、適切な等級認定や損害額の主張に高度な専門知識が必要です。

そのため、交通事故に詳しい弁護士に相談し、適切な資料の収集・主張を行うことが極めて重要です。


5. 結の杜総合法律事務所にご相談ください

結の杜総合法律事務所では、交通事故における後遺障害や逸失利益の請求に関して、多くの解決実績があります。ご相談の際には、事故後の流れや保険の使い方、費用についても弁護士が丁寧にご説明いたします。

弁護士費用特約付きの自動車保険に加入されている方は、弁護士費用の自己負担が原則として不要です。
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コラム「自己破産とは?仕組みや手続き、デメリットまで詳しく解説」

2025-06-06

自己破産とは何か

自己破産とは、借金などの返済ができなくなったときに、裁判所を通じて債務を整理する制度の一つです。債務者の財産を債権者に公平に分配するとともに、返済しきれなかった借金を「免責」によって帳消しにすることで、債務者の生活再建を支援します。

自己破産は、個人・法人を問わず、債務者自らが裁判所に申立てることで始まります。中でも、個人の破産の多くが自己破産によって処理されており、生活の立て直しを目的とした重要な制度といえます。

自己破産の手続きの流れと開始条件

自己破産が認められるための条件

自己破産をするには「支払不能」であること、つまり継続的に借金の返済ができない状態であることが必要です。これは、以下のような状態をいいます。

  • 財産や収入が借金の返済に足りない
  • 信用や労働力を使っても資金調達が困難
  • 一時的な資金不足ではなく、慢性的な返済不能

支払不能かどうかは、裁判所が個別に判断します。生活保護を受けている方など、収入や資産状況により支払不能と認定されるケースもあります。

破産手続開始決定と免責手続

支払不能と認められると、「破産手続開始決定」が下されます。しかしこの段階では、借金はまだ帳消しにはなりません。借金を免除されるには、さらに「免責許可決定」を受ける必要があります。

自己破産の目的は、この免責を得て借金の支払い義務から解放されることにあります。

免責とは?借金が帳消しになる仕組み

免責とは、自己破産によって処理できなかった借金の支払い義務を裁判所が免除する決定です。免責許可が下されると、原則としてすべての借金が帳消しになります。

個人の自己破産では、財産が少ないケースが多いため、「同時廃止」といって破産手続きと同時に免責に進む簡易な方法が選ばれることもあります。

免責が認められないケース(免責不許可事由)

以下のような行為がある場合、免責が認められない(=借金が帳消しにならない)可能性があります。

  • 故意に財産を隠したり処分したりした場合
  • 特定の債権者にだけ優遇した返済をした場合
  • ギャンブルや浪費により多額の借金をした場合
  • 虚偽の債権者名簿を提出した場合
  • 裁判所の調査に非協力的な態度をとった場合

ただし、事情によっては裁判所の裁量で免責が認められることもあります。

免責されない借金(非免責債権)とは

以下のような債権は、免責許可が下りても支払い義務が残ります。

  • 税金や罰金
  • 故意または重大な過失による損害賠償請求
  • 養育費や扶養義務に基づく請求
  • 使用人(従業員)からの給与や預り金の請求
  • 債権者名簿に記載されなかった債権 など

これらは「非免責債権」と呼ばれ、自己破産によっても支払い義務が免除されません。

自己破産のデメリット

一時的な資格制限

自己破産をすると、一定の資格や職業に就けなくなる場合があります。例えば以下のような職業です。

  • 弁護士、公認会計士、税理士などの士業
  • 宅建業者、警備業者、生命保険募集人など
  • 後見人、遺言執行者などの民法上の職務

ただし、免責が確定すればこれらの資格制限は解除されます。

旅行や転居の制限

破産管財人が選任されると、長期の旅行や転居には裁判所の許可が必要になります。また、郵便物が破産管財人に転送されるなどの不便もありますが、これも破産手続終了後に解消されます。

信用情報への登録

自己破産をすると、個人信用情報に事故情報として登録されます。そのため、5〜7年程度はクレジットカードの作成やローンの利用が難しくなります。ただし、借金を返済できなくなれば、破産しなくても事故情報は登録されます。

7年以内の再度の破産で免責が受けられない

過去7年以内に免責を受けたことがある場合は、再び破産しても原則として免責が認められません。

自己破産に対する誤解と真実

自己破産にはいくつかの誤解がありますが、以下のような心配は不要です。

  • 戸籍や住民票に記載される?
    → 記載されません。官報に公告されるだけで、一般の人の目に触れることはほとんどありません。
  • 就職や結婚に支障が出る?
    → 一般企業であれば自己破産によって就職が制限されることはありません。結婚にも法律上の制限はありません。
  • 会社に知られる?解雇される?
    → 給与の差押えなどがなければ会社に知られることは少なく、破産を理由に解雇されることも基本的にはありません。

まとめ:自己破産は生活再建のための制度です

自己破産は「人生の終わり」ではありません。借金問題をリセットし、再スタートを切るための法的手段です。借金に悩んでいる方は、一人で抱え込まず、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

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コラム「相続税の申告期限までに遺産分割が終わらないときの対処法とは?」

2025-05-31

「父が亡くなって相続が発生しましたが、相続人同士でもめており、相続税の申告期限までに遺産分割が終わりそうにありません。このような場合、相続税の申告はどうすればよいのでしょうか?」

結の杜総合法律事務所には、相続税の申告期限に関するこのようなご相談が多く寄せられています。
相続税の申告は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内に行う必要がありますが、遺産分割が申告期限までに完了しないケースは少なくありません。

本記事では、相続税の申告期限までに遺産分割が終わらない場合の具体的な対処法や、適用できる相続税の特例制度について、弁護士・税理士の観点から詳しく解説いたします。


1. 遺産分割が終わっていない場合でも相続税の申告は必要

相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)までに遺産分割が完了していない場合でも、相続税の申告は必要です。

この場合、未分割の財産は、法定相続分に基づいて各相続人が取得したものとして課税価格を計算し、申告書を作成・提出します。

ポイント:

  • 期限を過ぎても申告書の提出は可能(期限後申告)。
  • ただし、無申告加算税などのペナルティが発生することがあります。

2. 遺産分割が終わっていないと適用できない相続税の特例

相続税の軽減措置として以下のような特例がありますが、これらは申告期限までに遺産分割が完了していることが条件です。

  • 配偶者の税額軽減
  • 小規模宅地等の特例
  • 特定計画山林の特例

ただし、「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付すれば、分割完了後に特例を適用できる可能性があります。


3. やむを得ない事情による延長措置と承認申請

遺産分割が申告期限から3年以内にも終わらなかった場合でも、「やむを得ない事情」があると認められれば、特例の適用が可能になる場合があります。

「やむを得ない事情」とは

  • 遺産分割調停・審判・訴訟が継続している
  • 遺産分割が一時的に禁止されている
  • 相続人の重病や海外在住などで分割が困難

このような場合は、「承認申請書」を所轄税務署に提出する必要があります。


4. 分割後の対応:更正の請求・修正申告

遺産分割が後日完了した場合の対応は以下の通りです:

  • 相続税額が減額になる場合:「更正の請求」が可能
  • 相続税額が増額になる場合:「修正申告」が必要

いずれも、期限や提出書類に注意が必要ですので、早めに専門家へご相談ください。


5. 弁護士・税理士が在籍する結の杜総合法律事務所だから安心

結の杜総合法律事務所は、弁護士法人と税理士法人を一体運営しており、代表の髙橋は弁護士・税理士の両資格を有しています。東北エリアでこの形態は唯一です。

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コラム「カスタマーハラスメントとは?企業・事業主が取るべき具体的な対応策と予防法を徹底解説」

2025-05-23

近年、顧客による過剰なクレームや迷惑行為、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が企業現場で深刻な問題となっています。従業員を守るためには、事業主が適切な対策を講じることが不可欠です。本コラムでは、企業に求められるカスタマーハラスメント対応の基本から、法的視点、具体的な対応策までを弁護士が解説します。

1. 企業・事業主に求められるカスタマーハラスメント対策とは【法的視点】

2019年の労働施策総合推進法改正により、事業主には職場におけるハラスメント防止措置が義務化されました。2020年1月には厚生労働省から「職場におけるハラスメント防止指針(告示第5号)」が出され、カスタマーハラスメント対策もその対象となっています。

具体的に企業が求められる対策は以下の通りです:

  • 相談体制の整備(対応部署や相談窓口の設置)
  • 従業員の心身ケア(メンタルケア体制の整備)
  • ハラスメント防止の教育・研修

企業がこうした対策を行うことで、以下のようなメリットも期待できます:

  • 顧客対応の質の向上
  • 問題顧客の減少
  • 職場の士気向上・離職率低下

2. カスタマーハラスメントは犯罪に該当することも【違法性の具体例】

厚生労働省の調査でも、カスタマーハラスメントはパワハラやセクハラに次いで多いとされています。

カスタマーハラスメントに該当する言動の例:

要求内容が不当な場合(例):

  • サービスに非がないにも関わらず執拗に返金・補償を求める
  • サービス内容と無関係な個人的要求をする

手段・態様が不当な場合(例):

  • 暴力・脅迫・人格攻撃
  • 土下座の強要や居座り
  • 継続的な悪質クレーム
  • 従業員への個人攻撃

これらの行為は、刑法により暴行罪・脅迫罪・業務妨害罪等に該当する可能性があり、適切な対応が求められます。


3. 企業が行うべきカスタマーハラスメント対策【事前準備と事後対応】

【事前準備:起こる前に備える】

  • 基本方針の社内共有
  • 相談窓口や対応者の明確化
  • 対応マニュアル・研修の実施

【事後対応:発生後の対処】

  • 事実関係の正確な把握
  • サービスに不備があれば誠意ある対応
  • 従業員へのフォロー(精神面も含む)
  • 再発防止策の見直し・継続的改善

また、相談者のプライバシー保護不利益取扱いの禁止も重要な視点です。


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コラム「離婚時の『住宅ローン付き不動産』はどう分ける?財産分与の具体的な方法を解説」

2025-05-16

離婚を考える際、「住宅ローンが残っている自宅はどうすればよいのか?」という疑問を持つ方は非常に多くいらっしゃいます。住宅ローンが残る不動産は、財産分与の対象になるのか、また、分与の方法にはどのような選択肢があるのか――このコラムでは、法律的な観点から詳しく解説いたします。


1. 住宅ローン付き不動産は財産分与の対象になるの?

離婚時の財産分与では、不動産が「共有財産」として扱われるかどうかが重要です。以下のような点を総合的に判断する必要があります。

  • 不動産の取得時期や名義
  • 不動産の時価とローン残高のバランス
  • 売却か取得か、どちらの方法を取るか
  • 名義が単独か共有か
  • 履行(支払や引渡し)をどう確保するか

2. 財産分与の対象になるケースとならないケース

● 不動産の名義と取得の経緯がカギ

不動産の名義が夫・妻のいずれか一方であっても、取得資金が共有の財産(婚姻中の収入など)であれば、財産分与の対象になります。一方、親族からの援助で購入した場合、その割合に応じて対象部分が限定されることもあります。

● 住宅ローンの支払い実績も考慮される

婚姻期間中に支払った住宅ローンは、原則として夫婦双方の寄与として扱われ、通常は半々の割合で考えられます(東京高判平成10年2月26日等)。


3. 不動産の価値がローン残高より多い場合の対応

● 不動産を売却する場合

売却額からローン残高と諸経費(仲介手数料など)を引いた残額が財産分与の対象となります。たとえば、

  • 売却価格:3,000万円
  • ローン残高:1,800万円
    → 残り1,200万円を2分の1ずつ分与(600万円ずつ)

名義が単独である場合、仮登記や保全処分を用いて履行を確保する方法も検討が必要です。

● 一方が不動産を取得し、住み続ける場合

住宅ローン残高を控除した不動産の時価分を、取得者が相手に「清算金」として支払う形になります。この場合、公正証書を作成するなど、履行を確実にする措置が望ましいです。


4. 不動産の価値がローン残高より少ない場合の対応

● 売却してもローンが残るケース

例:不動産の売却額が2,000万円、ローン残高が3,000万円 → 残り1,000万円の債務が残る
この場合、債務の分担方法(債務引受など)を協議で決める必要があります。ただし、債権者との関係では、名義変更や保証人変更を行わなければ、法的な支払義務は変わりません。

● 一方が取得し、ローン全額を負担するケース

取得者がローン全額を負担する代わりに、不動産全体を引き継ぐ形が一般的です。その他、慰謝料や扶養的財産分与の形で、片方が一部ローンを負担する合意をすることもあります。


5. 弁護士に相談するメリットとは?

住宅ローン付き不動産の財産分与は、非常に複雑な問題を含んでいます。名義・債務・清算金の取り決め、履行確保の方法など、専門的な判断が不可欠です。


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コラム「【経営者・ビジネスオーナー必見】事業譲渡で新規事業・事業拡大を成功させるには?手続きの流れを解説」

2025-05-09

新規にビジネスを始めたいときや、既存事業をさらに拡大・発展させたいと考えたとき、ゼロから立ち上げるよりも、すでに実績やノウハウを持つ他社の事業を譲り受けることを検討する経営者の方も多いのではないでしょうか。

では、実際に事業を譲り受けるには、どのような手続きが必要になるのでしょうか?
今回は、事業譲渡の手続きと注意点について、わかりやすく解説します。


事業譲渡とは?ビジネス拡大・新規事業スタートに有効な手段

「事業譲渡」とは、ある会社が他社に対して事業の全部または一部を売却し、買い手がそれを引き継ぐ手続きです。
この方法を使えば、すでに顧客基盤やノウハウを持つ事業を手に入れることができ、スピーディーな事業拡大や新規事業立ち上げが可能になります。

ただし、手続きや法律上のポイントをしっかり押さえることが重要です。


事業譲渡の基本的な手続きの流れ

1. 基本合意書(覚書)の作成

まずは売り手・買い手双方で、譲渡する事業の範囲、金額、従業員の処遇、競業避止義務(売り手が同業で再スタートしない約束)などについて合意し、覚書を交わすのが一般的です。

2. 取締役会の承認

会社法上、重要な資産の取得にあたるため、取締役会で承認決議を行う必要があります(会社法362条4項1号)。

3. 事業譲渡契約書の締結

事業譲渡の具体的な内容を記載した契約書を締結します。契約書には、

  • 事業財産の範囲
  • 代金の支払い方法
  • 従業員・商号の引継ぎ
  • 債務の取り扱い

などを明記します。

4. 株主総会の特別決議

譲受けが会社全体に大きな影響を及ぼす場合、株主総会で特別決議を行う必要があります(会社法467条1項3号)。

※取引規模が小さい場合(純資産額の1/5以下)は「簡易手続き」が可能な場合もあります。


事業譲渡時に注意すべき「債権者への対応」

事業を引き継いでも、前の会社の借金(債務)を自動的に引き継ぐわけではありません
ただし、次のようなケースでは新しいオーナー(譲受会社)が債務を負担することになるため注意が必要です。

  • 商号(会社名)を引き継いだ場合(原則、全債務の責任を負う)
  • 債務を引き継ぐ旨を広告・通知した場合

特に、商号続用の場合には、すぐに「旧会社の債務は引き継ぎません」と登記や通知をしないと、知らないうちに債務を負うリスクも。
事前にしっかりと弁護士に相談して進めることが大切です。


公正取引委員会への届出が必要な場合も

一定規模以上(大型案件)の事業譲渡では、独占禁止法に基づき公正取引委員会への事前届出が必要になります。
届出後、原則30日間は譲渡手続きを実行できませんので、スケジュールにも注意しましょう。


まとめ:事業譲渡はスピード感のある成長戦略!しかし慎重な対応が必要

事業譲渡をうまく活用すれば、リスクを抑えながらビジネス拡大や新市場参入が実現可能です。
ただし、法律上の手続きや債務問題、税務リスクなど、慎重な対応が求められます。


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コラム「【弁護士監修】相続放棄とは?借金相続を回避する方法と手続きの流れを解説」

2025-04-25

「親が亡くなった後、借金の請求が来た」そんなときの対処法とは?

Q:父が亡くなりましたが、多額の借金があるようです。相続放棄をすれば借金を相続しなくて済むのでしょうか?

A:相続放棄をすることで、借金を含むすべての相続財産を引き継がずに済みます。ただし、相続放棄には期限があるため、注意が必要です。


相続放棄とは?~借金も含めて一切の相続を断る手続き~

相続放棄とは、相続人が被相続人(亡くなった方)の財産や借金など一切の権利義務を引き継がないとする法律上の手続きです(民法第915条)。相続放棄をすると、最初から相続人でなかったものとみなされ、借金の支払い義務も免れます。

【注意】遺産分割協議で相続分を「0」にしても相続放棄にはなりません

相続放棄は家庭裁判所での手続きが必要であり、遺産分割協議で何も受け取らなかっただけでは、放棄とは扱われません。


相続放棄の手続きと期限(熟慮期間)

相続放棄の方法

相続放棄を希望する場合は、相続が開始されたことを知った日から3か月以内に、家庭裁判所に申述を行う必要があります。この3か月を「熟慮期間」と呼びます。

3か月のカウントはいつから?

熟慮期間の起算点は以下の2点を知ったときからです:

  • 被相続人の死亡という事実
  • 自分が相続人になったこと

【例外】熟慮期間の延長も可能

借金の有無がすぐには分からない場合など、相続財産の調査に時間を要するケースでは、家庭裁判所に熟慮期間の延長申立てが可能です。弁護士などの専門家の助言を受けながら対応するのが安心です。


相続放棄が認められないケースとは?

以下の場合には、相続放棄が認められず、「単純承認(全てを相続する)」とみなされるので注意が必要です(民法第921条):

  • 相続財産の一部でも処分した場合
  • 熟慮期間内に相続放棄の手続きをしなかった場合
  • 放棄後に相続財産を隠す・使う・財産目録に記載しないなどの行為をした場合

相続放棄をしても受け取れるものとは?~生命保険金や死亡退職金など~

生命保険金は相続財産に含まれない

死亡保険金の受取人が特定されている場合は、その保険金は受取人固有の財産とされ、相続財産には含まれません。したがって、相続放棄をしても受け取ることが可能です。

死亡退職金も相続放棄しても受給可能な場合が多い

就業規則等により受取人が定められている場合、死亡退職金も相続財産とはみなされず、相続放棄の影響を受けません。ただし、ケースにより異なるため確認が必要です。


相続放棄と税務上の取扱い

準確定申告の義務

被相続人が生前に申告すべきだった所得税等については、相続人が準確定申告を行う義務があります。ただし、相続放棄をした人は最初から相続人でなかったとみなされるため、申告義務はありません

相続税の基礎控除に影響

相続税の非課税枠の計算では、相続放棄がなかったと仮定した相続人の数をもとに基礎控除額を算出します。また、生命保険金については、相続放棄をすると非課税枠の適用が受けられなくなる点にも注意が必要です。


弁護士による相続放棄のサポートを活用しましょう

相続放棄は、期限が短く、要件も複雑な手続きです。放棄の意思がある場合は、できるだけ早く専門家に相談することが重要です。

結の杜総合法律事務所では、

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