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コラム「相続 寄与分・特別寄与料とは?」

2024-12-13

 被相続人(亡くなられた方)を介護したり、一緒に仕事をするなどして被相続人の財産の維持・増加に寄与した相続人又は相続人以外の方は、被相続人が亡くなられた際に何らかの恩恵を得ることができるのでしょうか。

 これが、寄与分・特別寄与料の問題です。

1 寄与分

(1)概要

 寄与分とは、相続人の中に、被相続人を療養介護をするなど、その財産の維持又は増加について、特別な寄与をした者がいる場合に、法定相続分に寄与に相当する額を加えた財産の取得を認め、相続人間の衡平を図ろうとする制度のことをいいます。つまり、そのような特別な寄与をした相続人は、遺産を通常よりも多く貰えるということです。

 このような寄与分は、相続人にのみ認められるものですが、相続人以外の被相続人の親族(6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族)が、特別の寄与をした場合は、相続人に対し、後述する特別寄与料の支払を請求できます。

(2)寄与分の要件

 寄与分は、当事者全員の合意がある場合か、次の要件を充たす場合に認められます。

① 特別な貢献であること

 被相続人と相続人との関係において通常期待される以上の特別な貢献であることが必要です。したがって、例えば、親子間において、週に1、2回程度通院や買い物に付き添うというような一般的な扶養の範囲と言える程度の貢献では足りません。

② 相続開始前までに行われた行為であること

 寄与行為は、相続前、すなわち被相続人が亡くなる前の行為であることが必要です。そのため、被相続人が亡くなった後に、葬式や法要、遺品整理をしたなどの行為は該当しません。

③ 被相続人の財産の維持・増加との間に因果関係があること

 寄与行為により、被相続人の財産が維持又は増加していることが必要です。

④ 無償で行われたものであること

 寄与行為が、対価あるいはそれに相当する利益を得ずに、無償で行われていたことが必要です。

 したがって、被相続人と一緒に事業を行っていても、相当額の給与を得ていたり、生活費を被相続人の収入で賄っていたり、被相続人の住居に無償で住んでいたり、成年後見人として報酬を受領しながら財産管理をしていたなどのような場合には、対価あるいは利益を得ていたと言え、寄与行為が無償で行われたとは認められません。

(3)寄与分はいつまで主張できるか

 原則として、相続開始の時から10年です。

 なお、2023年4月1日以前に相続が開始している場合は、相続開始から10年経過時点と2028年3月31日のいずれか遅い方の時点まで主張できます。

 ただし、A.相続開始の時から10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき、B.相続開始の時から始まる10年の期間の満了前6か月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から6か月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたときは、寄与分の主張をすることができます。

(4)寄与行為にはどのようなものがあるか

 寄与行為の類型には次のようなものがあります。ただし、以下のような行為を行えば直ちに寄与分として認められるのではなく、それが「特別の寄与」といえる程度のものでなくてはなりません。

 a)家事従事型(被相続人の事業に従事した場合)

 b)金銭等出資型(被相続人に対し財産上の利益を給付した場合)

 c)療養看護型(被相続人が被相続人の療養介護に従事した場合)

 d)扶養型(相続人が被相続人を扶養し、被相続人が出費を免れたため財産が維持された場合)

 e)財産管理型(被相続人の財産を管理することによって財産の維持形成に寄与した場合)

(5)寄与分はどのようにして決めるか

 寄与分は、相続人全員の協議によって決めることができます。

 もし協議が調わず、又は協議をすることができない場合には、家庭裁判所での調停又は審判によって決めることになります。

2 特別寄与料

(1)概要

 上記の通り寄与分は相続人にしか認められませんが、相続人以外の親族が、被相続人に対して無償で療養介護などをして、被相続人の財産の維持又は増加した場合、その親族(特別寄与者)は、相続開始後、相続人に対し、特別寄与料の支払を請求できます。

(2)特別寄与料の要件

 特別寄与料の請求が認められるためには、寄与分の要件と同様、療養介護などの行為が無償で行われたこと(無償性)、療養介護などによって被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与があると認められること(特別の寄与があること)のほか、そのような労務を提供した者が被相続人の親族(6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族)であることが必要です。

(3)特別寄与料はどのようにして決めるか

 特別寄与料は、当事者間の協議で決めることができますが、協議が調わず、又は協議をすることができない場合は、家庭裁判所での調停又は審判によって決めることになります。

 ただし、上記調停又は審判の申立ては、特別寄与者が相続の開始があったこと及び相続人を知った時から6か月を経過した場合、又は相続開始の時から1年を経過した場合にはできなくなります。また、2019(令和元)年7月1日より前に開始した相続に関しては、この申立てをすることはできませんので、注意が必要です。

3 まとめ

 以上、簡単ではありますが、寄与分・特別寄与料についてご説明いたしました。

 実際にご自身の行為が寄与分や特別寄与料が認められる程度のものなのか否か、認められた場合にどの程度の金額になるのか等、より詳しい内容についてお知りになりたい方はもちろん、調停・審判等の各種手続の内容及び利用の適否、実際にかかる料金等についてお知りになりたい方は、結の杜総合法律事務所まで、お気軽にお問い合わせください。直接弁護士より丁寧にご説明させていただきます。

コラム『相続 配偶者居住権・配偶者短期居住権とは何か?』

2024-11-29

 同居する夫婦の一方が亡くなった場合、他方の配偶者は、亡くなった方(被相続人)が所有していた建物に住み続けられるのでしょうか。

 被相続人が亡くなると相続が開始しますが、被相続人の配偶者のほかに相続人がいた場合、遺言がない限り配偶者が遺産の全部(あるいは居住する建物)を直ちに取得するわけではないため、他の相続人から、遺産である建物から立ち退くよう請求されるのではないかと不安になる方もいらっしゃるかと思います。

 近年の高齢化に伴い、配偶者に先立たれた他方の配偶者が、老後資金を確保しながら、それまで居住してきた住居に住み続けることを可能にするための制度創設の必要性が検討されてきました。そして、平成30年の民法改正により、配偶者居住権や配偶者短期居住権の制度が設けられ、令和2年(2020年)4月1日より施行されました。

1 配偶者居住権

 配偶者居住権とは、遺産である建物に居住していた配偶者に、相続開始後も当該建物の全部を無償で使用収益することを認める権利です。

 これは、配偶者が、被相続人が所有する建物に、相続開始時(被相続人の死亡時)に居住していた場合において、遺産分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき、又は、配偶者居住権が遺贈の目的とされたときに成立します。ただし、その建物が、相続開始時において被相続人の単独所有か、被相続人と配偶者の共有でなければなりません。

 配偶者居住権は、配偶者の終身の間存続するのが原則です。つまり、配偶者は、生存している間はそのまま住み続けられるということです。ただし、遺産分割協議や遺言に別段の定めがあるときや、遺産分割の審判において別段の定めがされたときは、それに従うことになります。

 また、配偶者が居住する建物の所有者は、配偶者居住権を取得した配偶者に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負います。

 なお、配偶者が遺産分割において配偶者居住権を取得する場合は、他の遺産を取得する場合と同様、自らの具体的相続分(遺産に対する取り分)の範囲においてこれを取得することになるため、配偶者居住権の財産的価値を評価することが必要となります。そして、配偶者居住権の財産評価は、現在のところ、実務上はおおむね次のように算出するのが相当と考えられています。

(計算式)配偶者居住権の価額=建物敷地の現在価額-配偶者居住権付所有権(負担付建物所有権+負担付土地所有権等)の価額

 さらに、配偶者居住権は、相続税の課税対象になります。

2 配偶者短期居住権

 上記の通り、配偶者居住権は、遺産分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき、又は、配偶者居住権が遺贈の目的とされたときに成立することとされています。そうすると、遺産分割前であり、かつ、遺贈もない場合、配偶者には、相続開始後も建物に居住する権利は一切ないのでしょうか。

 実は、そういうわけではありません。

 配偶者が、相続開始時に、被相続人の所有する建物に無償で居住している場合、配偶者短期居住権が成立します。

 これは、相続開始時に被相続人の財産に属した建物に無償で居住していた配偶者に一定期間の無償居住を認める制度であり、建物について配偶者を含む共同相続人で遺産分割をすべき場合は、「遺産分割により居住建物の帰属が確定した日」又は「相続開始の日から6ヶ月を経過する日」のいずれか遅い日まで存続します。

 前記以外の場合(建物が配偶者以外の者に遺言により承継された場合等)には、居住建物取得者が配偶者短期居住権の消滅の申入れをしてから6ヶ月を経過する日まで存続します。

 つまり、最短でも相続開始から6ケ月間は、配偶者の居住が確保されるということです。

 なお、配偶者短期居住権は、相続を放棄した配偶者にも認められる権利であり、また、遺産分割協議の対象にもなりません。そして、その財産的価値は、使用借権類似の法定債権と位置付けられ、遺産分割が成立するまでの過渡的な権利であるため、使用貸借に係る土地の使用権と同様にゼロと考えられ、相続財産には当たらず、相続税の課税対象にもなりません。

3 まとめ

 以上、簡単ではありますが、配偶者居住権、配偶者短期居住権の概要をご説明いたしました。

 配偶者居住権や配偶者短期居住権のより詳しい内容についてお知りになりたい方はもちろん、遺産分割の進め方や、調停等の各種手続の内容及び利用の適否、実際にかかる料金等についてお知りになりたい方は、結の杜総合法律事務所まで、お気軽にお問い合わせください。直接弁護士より丁寧にご説明させていただきます。

コラム『法人破産とはどのような手続?』

2024-11-14

 会社の資金繰りが厳しくなり、そのまま経営を継続していくことが難しくなった場合、どのような手続きが考えられるのでしょうか。

 このような場合、再建を目的とするものとしては、私的整理、民事再生、会社更生、清算を目的とするものとしては、特別清算、破産といった方法が考えられます。

 ここでは、法人の破産についてご説明いたします(なお、より詳しく知りたい方は「法人破産(会社破産)」を御覧ください。)。

1 法人破産とは

 法人破産とは、支払不能や債務超過に陥った会社(法人)を清算する手続きであり、裁判所に申し立てることによって行います。

 裁判所に破産手続開始の申立てを行い、開始決定が出ると、裁判所が、財産の調査や処分等を行う破産管財人を選任します。

 そして、破産管財人は、債権調査、財産の調査・処分を行い、会社に財産が残っている場合には、それを換価(現金化)して債権者に配当を行います。

 配当が完了すると、最終的に会社は消滅することになります。

 なお、経営者様が会社の債務を連帯保証しているような場合には、会社が破産しても、その保証債務は残りますので、経営者様個人も破産手続をとる必要があることも多いです。

2 メリットとデメリット

(1)法人破産の主なメリットとしては、次のようなものがあります。

  ① 債権者の取り立てから解放される

 会社の資金繰りが厳しくなると、買掛金、リース料、借入金等の債務の返済が滞り、債権者からの厳しい取り立てに、連日連夜、悩まされることもあるでしょう。

 法人破産を弁護士に依頼すると、弁護士から債権者に対し、受任通知を送付し、弁護士がその後の窓口となりますので、経営者様自らが債権者と直接やり取りをしなくても良くなり、事実上、債権者の取り立てから解放されます

  ② 会社の借金がなくなる

 前記の通り、法人破産は、会社を清算し、法人格を消滅させる手続です。

 したがって、破産手続が完了すると、会社の借金は返済しなくて良くなります。もちろん経営者様は新たな職に就くことも可能ですし、新たに会社を設立したり、別の会社の役員に就くこともできます。

 ただし、経営者様が連帯保証している場合、会社が破産し、会社の借金がなくなっても、その保証債務がなくなるわけではありませんので、保証債務を返済できない場合は経営者様個人も破産手続をする必要があります。

 ※個人破産については、こちらを御覧ください。

  ③ 債権者は貸倒処理ができる

 債権者側のメリットになりますが、会社が破産することにより、その債権者は、会社に対する債権を貸倒として損金処理することができます。

(2)他方、法人破産の主なデメリットとしては、次のようなものがあります。

  ① 事業継続が不可能になり、法人名義の財産を失う

 法人破産により、最終的に会社は消滅しますので、事業の継続はできなくなります。

 また、会社の財産は、全て換価され、債権者への配当に充てられますので、法人名義の財産も全て失うことになります。

  ② 従業員を失う

 法人破産は会社を清算、消滅させる手続ですので、従業員は全員解雇する必要があります。そのため、長年勤務していただいた従業員も全員失うことになります。

  ③ 信用を失う

 破産は、債務を消滅させる手続ですので、取引先はもちろん、経営者様に対する信用が失われることは否定できません。

 しかし、前記の通り、会社が破産すると、債権者は貸倒として損金処理をすることができますので、返済できないからといって何も処理せずに放って置くよりも、破産手続をとって適切な対応をすることの方がより誠実であるといえます。

3 法人破産の流れ

  法人破産の大まかな流れは以下の通りです。

 ① ご相談

 まずは弁護士と直接面談していただきます(五橋本店・泉中央支店では新規のお客様は初回相談無料、東京支店は50分5,500円で承っております。なお、お電話のみでのご相談、ご依頼はできませんので、ご了承ください。)。

 面談では、会社の経営状態、財産状況、債務の内容(借入・取引先、負債の金額及び残額等)などを詳しくお伺いいたします。その際、直近3期分程度の決算書、通帳、契約書、請求書などの関係資料をお持ちいただくとスムーズです。

 また、その際、どのようなスケジュールで進めるべきか(例えば、まだ営業している場合は、営業停止時期や従業員の解雇のタイミング、破産申立の時期等)についてもアドバイスさせていただきます。

   ↓

 ② 受任通知の発送

 弁護士が破産事件を受任すると、弁護士から債権者に対して、受任通知を発送します。受任通知は、債権者に弁護士が介入したことを知らせるもので、これにより、ご依頼者様に対して直接取立てがなされることはなくなり、また、債権者との連絡も全て弁護士が窓口になって対応しますので、ご依頼者様が債権者と連絡を取り合う必要もなくなります。

 さらに、弁護士が受任した後は、債権者に対する支払もする必要はありません。

 なお、会社の状況によっては、秘密裏に破産の準備を進める必要があるケースもあり、その場合は受任通知を発送せずに、迅速に申立準備を進めることもあります。

   ↓

 ③ 必要書類の収集・作成・打合わせ

 受任通知発送後、ご依頼者様には破産の申立に必要な書類の収集等をしていただきます。もちろん、どのような書類が必要なのか等については、弁護士の方からご説明させていただきます。

 また、同時に、弁護士は、会社の財産が散逸することを防ぐため、会社の財産の引渡しを受けるなどして、その保全に努めることになります。お預かりした財産については、破産開始決定後、破産管財人に引き継ぎます。

   ↓

 ④ 破産の申立

 書類の準備が整った後、弁護士が破産の申立書を作成し、裁判所に破産の申立を行います。申立は、原則として会社の所在地を管轄する裁判所に行います。

 また、申立てに際し、裁判所が定める予納金(破産申立の手続費用)、官報公告費用等を、裁判所に納める必要があります。なお、予納金は、裁判所ごとに基準額が定められており、負債総額、債権者数等の諸事情を考慮して決定されます。

   ↓

 ⑤ 破産手続開始決定

 申立後、早ければ数日以内に破産手続開始決定が出され、破産管財人が選任されます。破産管財人は、申立人側の弁護士とは別の弁護士から選任されます。

 破産管財人が選任されましたら、申立書類一式のほか、お預かりしているその他の必要書類、財産を破産管財人に引き継ぎます。

 また、依頼者様には、後日、破産管財人と面談、打合せをしていただくことになります。その際、必要に応じて弁護士も同席させていただきます。

   ↓

 ⑥ 債権者集会

 破産手続開始決定と同時に、決定から概ね3~4か月後に債権者集会の期日が指定されます。当日は、弁護士と一緒にご依頼者様にも裁判所に出頭していただきます。

 債権者集会では、破産管財人から、会社が破産に至った経緯や財産の調査・換価状況、今後の方針などが報告されます。

 その際、債権者から質問がなされることがあります。多くの場合は、破産管財人に対する質問ですが、会社の経営者に対して質問がなされることもあります。

 なお、債権者集会は、複数回行われることもあります。

   ↓

 ⑦ 債務の確定・配当

 破産手続開始決定後、債権者から債権届出がなされ、会社の債務が確定します。

 そして、破産管財人は、会社の財産の換価が終わると、各債権者に対し、配当を行います。

   ↓

 ⑧ 破産手続の終結

 全ての配当が終わると、破産手続は終結します。これにより、会社の登記簿は閉鎖され、法人格は消滅し、負債は全てなくなります。

4 最後に

 以上、法人破産のメリット・デメリット、大まかな流れについて、ご説明いたしました。

 しかし、そもそも法人破産を選択すべきかどうかという点でお悩みになられている方もいるでしょう。そのような場合でも、弁護士が詳しくお話をお聞きした上で、適切な選択肢をご提示いたします。

 もちろん説明を聞き、ご納得された上でお申込み頂けます。また、無理な勧誘なども一切しておりません。
 まずはお気軽にご相談ください。

 なお、より詳しい説明は「法人破産(会社破産)」にもございます。

コラム『相続登記をせずに放置しているとどうなる?』

2024-11-01

このようなお悩みはありませんか?

 「遺産分割がまとまらず、土地の名義が亡くなった方のままになっている」

 「遺産分割をしないまま遺産である土地の名義を変更せずに長年放置していたら、その相続人も亡くなり、更に相続が発生して相続人の数が増え、手がつけられなくなってしまった」

 相続登記とは、亡くなった方(被相続人)が所有していた不動産を相続したときに行う、不動産の名義変更のことです。

 相続が発生した場合、相続人間で遺産分割協議を行い、誰がどの遺産を取得するのかを決め、その結果、不動産を取得した相続人がいる場合は、法務局に申請し、その不動産の名義変更を行わなくてはなりません。

 しかし、相続が発生しても相続登記をせずに長期間放置したため、その間に世代交代が進んでしまい、結果として所有者の把握が困難となり、不動産取引や都市開発の妨げになるという事態が多々生じていました。

 そのため、法改正により、相続登記の申請が令和6年4月1日より義務化されることとなりました。

 その主な内容は、次のとおりです。

① 相続(遺言含む。)によって不動産を取得した相続人は、取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければならない。

② 遺産分割協議によって不動産を取得した相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に相続登記をしなければならない。

③ 令和6年4月1日より以前に相続が開始している場合も対象となり、この場合、令和6年4月1日から3年以内、つまり令和9年3月31日までに相続登記をしなければならない。

④ 正当な理由なく上記義務に違反した場合は10万円以下の過料となる可能性がある。

 このように、相続登記をせずに放置すると、登記上の名義人と実際の所有者が一致しないため不動産の売却ができなかったり、固定資産税等の税金の支払や不動産管理に関するトラブルが生じる可能性があることのほか、義務違反による過料が科される可能性もあることから、遺産分割協議がまとまらないからといってそのまま放置するのは得策ではなく、遺産分割調停・審判といった解決に向けた手続を検討すべきです。

 結の杜総合法律事務所では、遺産分割協議・調停等の手続の流れや、利用の適否、実際にかかる料金等を事前に直接弁護士より丁寧にご説明させて頂いております。

 また、遺産分割をしないまま長年放置したため、相続人が相当数に及んでしまい、遺産分割協議をすること事態が困難になってしまったというような場合でも、諦めることはありません。このような場合でも、弁護士がお話を詳しく伺った上で、最適な解決方法をご提案させていただきます。
 まずはお気軽にご相談ください。

コラム『相続 特別縁故者とは何ですか?』

2024-10-18

 遺産を取得できるのは相続人のみであるのが基本です。もし、お亡くなりになられた方(「被相続人」といいます。)に相続人がいない場合、遺産は最終的に国に帰属してしまうことになります。

 しかし、被相続人に妻や子どもがおらず、独り身である場合に、生前、そのご親族の方が身の回りの世話をしていることがあります。

 このような場合でも、相続人ではないことを理由として、世話をした方は何の遺産も取得できないのでしょうか。

 実は、そうではありません。相続人でなくても、「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者」(このような方を「特別縁故者」といいます。)について、家庭裁判所は、特別縁故者の請求によって、相続財産の一部又は全部を与えることができるとされているのです(民法958条の2)。

 そして、どのような方が特別縁故者に該当するかどうかは、裁判例では、「被相続人の意思を忖度、尊重し、被相続人と当該縁故者の自然的血縁関係の有無、法的血族関係に準ずる内縁関係の有無、生前における交際の程度、被相続人が精神的物質的に庇護恩恵を受けた程度、死後における実質的供養の程度その他諸般の事情をしんしゃくして分与の許否およびその程度を決すべき」とされています(大阪高裁決定昭和44年12月24日・判タ255・317)。

 特別縁故者に該当するかどうか、該当したとしてもどの程度の相続財産の分与が認められるかはケースバイケースではありますが、結の杜総合法律事務所では、相続人がいない被相続人が約1億1000万円の遺産を残してお亡くなりになられた事例で、身の回りの世話をしていたご親族の代理人として特別縁故者に対する相続財産分与の申立てを行い、9000万円の分与を獲得した実績がございます。

 また、特別縁故者として相続財産の分与を受けるためには、まずは家庭裁判所に対して、相続財産清算人の選任申立てを行わなければなりません。

 このように手続は単純・容易ではありませんが、結の杜総合法律事務所では、特別縁故者として認められる可能性があるかどうか、認められたとしてどの程度の相続財産の分与が認められ得るか、相続財産清算人選任の手続の流れや特別縁故者に対する相続財産分与の申立てまでの流れ、実際にかかる料金等を事前に直接弁護士より丁寧にご説明させて頂いております。説明を聞き、ご納得された上でお申込み頂けます。また、無理な勧誘なども一切しておりません。

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コラム『相続法改正のポイント』

2019-08-25

 平成30年7月に,約40年ぶりに相続法が大きく改正されました。すでに施行されているものもありますが,以下,主な改正のポイントをご紹介します。

 

1 配偶者の居住権を保護するための方策

 ① 配偶者短期居住権の新設(令和2年4月1日施行)

 被相続人の配偶者は,被相続人の財産に属した建物に相続開始時の時に無償で居住していたときは,遺産分割によりその建物の帰属が確定した日また相続開始の時から6カ月を経過する日のずれか遅い日までの間,その建物を無償で使用できる。

・相続放棄をした場合や遺言により相続分のゼロと指定された場合等は配偶者短期居住権は含まない。

・上記のほか居住建物を配偶者以外の相続人に相続させる旨の遺言がある場合等は,その建物の所有権を取得した者が配偶者短期居住権の消滅を申入れた日から6か月を経過するまでの間。

 

 ② 配偶者居住権の新設(令和2年4月1日施行)

 配偶者は,被相続人の財産に属した建物に相続開始時の時に居住していた場合で,遺産分割によって配偶者居住権を取得するものとされた時,配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき,のいずれかに該当するときは,その建物全部について無償で使用収益する権利を取得する。

・配偶者居住権の存続期間は,遺産分割において自由に定めることができる。定めがないときは,終身。

・登記可。

 

2 遺産分割等に関する見直し

 ① 配偶者保護のための方策(持ち戻し免除の意思表示推定規定)(令和元年7月1日施行)

 婚姻期間が20年以上の夫婦間で,居住用不動産の遺贈又は贈与がされたときは,持ち戻し免除の意思表示があったと推定。

 

 ② 遺産分割前の払戻し制度の創設等(令和元年7月1日施行)

 相続人は,遺産に属する預貯金のうち,その相続開始時の金額の3分の1に当該相続人の法定相続分を乗じた額については,他の相続人の同意がなくても単独で払戻しをすることができる。ただし,金融機関ごとの上限は150万円。

 

 ③ 遺産の分割前に遺産に属する財産を処分した場合の遺産の範囲(令和元年7月1日施行)

 遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合,相続人全員の同意があれば,当該処分された財産が遺産分割時に遺産として存在するものとみなされる。なお,相続人の一人又は数人より財産処分がされたときは,当該相続人の同意は不要。

 

3 遺言制度に関する見直し

 ① 自筆証書遺言の方式緩和(平成31年1月13日施行)

 自筆証書遺言に財産目録を添付する場合,当該財産目録は自筆ではなく,パソコン,ワープロ,代筆,登記や通帳の写しを添付する方法等で作成してもよい。なお,各ページに署名押印が必要。

 

 ② 遺言執行者の権限の明確化(令和元年7月1日施行)

 

 ③ 公的機関(法務局)における自筆証書遺言の保管制度の創設(令和2年7月10日施行)

・自筆証書遺言の場合,通常,家庭裁判所での検認が必要であるが,この場合は検認が不要になる。

 

4 遺留分制度に関する見直し

 遺留分権の行使によって,遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずることとなった(遺留分侵害額請求)。

(令和元年7月1日施行)

 

5 相続の効力等に関する見直し

 遺言等により承継された財産のうち,相続分を超える部分については,登記等の対抗要件がなければ第三者に対抗できない。

(令和元年7月1日施行)

 

6 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策

 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより,被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族は,相続開始後,相続人に対し,特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)の支払いを請求できる。

(令和元年7月1日施行)

 

 結の杜総合法律事務所では,遺産相続に関するご相談はもちろん,遺産分割手続の流れや利用の適否,実際にかかる料金等を事前に直接弁護士より丁寧にご説明させて頂いております。説明を聞き,ご納得された上でお申込み頂けます。また,無理な勧誘なども一切しておりません。
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コラム「自宅を手放さずに借金の整理をする方法」

2017-08-02

 自宅を所有している方が,多額の借金を理由に自己破産をすると,借金の支払義務はなくなりますが,自宅も手放さざるを得なくなります。

 しかし,自宅を手放さずに借金を整理する方法もあります。

 

(1)任意整理又は特定調停

 これは債権者との間で,分割払いを求めて交渉・協議を行う手続きです。債権者との間で,交渉・協議が成立すれば,もちろん自宅を手放す必要はありません。

 しかし,これはあくまでも債権者の同意がなければ成立させることはできませんので,債権者が分割払いに応じてくれない場合や,分割払いに応じたとしても毎月の支払額等で折り合いがつかない場合には,この手続きによる解決は難しくなります。

 また,任意整理や特定調停では,原則として元本カットは困難であると言わざるを得ません。

 

(2)個人再生手続

 この手続では,将来において継続的又は反復した収入を得る見込みがあるサラリーマンや個人事業主等(法人は除外)が,裁判所に申立を行い,その認可決定を得ることによって,「最低弁済額」といわれる一定の額(元本カットが可能)を原則3年間で支払うことにより,残額について免除を受けることができます。

 そして,個人再生手続の大きな特徴としては,①住宅ローンを抱えている場合でも,自宅を手放すことなく,元本カットを伴う債務整理ができること(ただし,一定の要件があります。),また,②借金の原因が浪費やギャンブル等の問題がある行為(これを「免責不許可事由」といいます。)で自己破産手続をとることが出来ない場合でも利用できるということ等が挙げられます。

 そのため,住宅ローンがある方で,自宅を手放したくないという場合には,任意整理や特定調停のほか,個人再生手続の利用も検討すべきでしょう。

 

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コラム「遺産分割協議と後見開始の審判申立」

2017-05-02

「父が亡くなり,遺産分割協議をしなくてはなりませんが,母が認知症で施設に入所しています。このような場合でも,遺産分割をすることは可能でしょうか。」

 

相続人の中に,認知症や精神障害などで判断能力が欠けている方がいる場合,その方を交えて遺産分割協議を行うことはできるのでしょうか。

答えは,「できません」

遺産分割協議が成立するには相続人全員の合意が必要ですが,その内一人でも判断能力の欠けた方がいると,遺産分割協議は無効となるからです。

 

このような場合,まず家庭裁判所に後見開始の審判を申し立て,それによって選任された成年後見人が,その相続人である被成年後見人(上記の例ではお母様)を代理して,他の相続人との間で遺産分割協議を行うことになります。

しかし,成年後見人が相続人以外の方(例えば弁護士や司法書士等)ではなく,相続人である場合,そのまま遺産分割協議を行うことは利益相反行為になってしまいます。

そこで,①成年後見監督人がいる場合には,同人が成年被後見人を代理し,②成年後見監督人がいない場合には,別途家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立て,その特別代理人が成年後見人を代理して,遺産分割協議を行うことになります。

 

結の杜総合法律事務所では,後見開始の審判申立,遺産分割協議・調停等の手続の流れや,利用の適否,実際にかかる料金等を事前に直接弁護士より丁寧にご説明させて頂いております。説明を聞き,ご納得された上でお申込み頂けます。また,無理な勧誘なども一切しておりません。
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コラム「預貯金と遺産分割(最高裁平成28年12月19日決定)」

2017-03-01

「共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。」(最高裁平成28年12月19日決定)

 

 従来,預貯金債権は相続の開始と同時に当然に,つまり遺産分割協議を経ることなく各相続人間において法定相続分に従って分割,取得されるものと考えられてきました。このような考え方によると,各相続人は,自己が取得した預貯金債権を他の相続人の同意なく単独で行使することができ,それぞれ金融機関に払い戻しを請求できることになります。

 しかし,実務上は,遺産分割手続において,預貯金債権も遺産分割の対象とする運用が広く行われてきました。

 上記最高裁決定は,このような実務上の運用や預貯金債権の内容及び性質を踏まえ,預貯金債権は相続開始と同時に当然には分割されず,遺産分割の対象となる旨判示し,従来の判例を変更しました。

 これにより,今後は金融機関において,遺産分割協議を経ずに払い戻しを受けることは難しくなると考えられます。

 

 

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コラム「私選弁護人と国選弁護人の違い」

2016-10-13

 刑事事件において,「私選弁護人」「国選弁護人」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。

 被疑者や被告人のために弁護活動を行う弁護士のことを「弁護人」と言いますが,「国選弁護人」も「私選弁護人」も,このような「弁護人」であることに変わりはありません。

 ただ,両者には以下のような違いがあります。

 

1 誰が選任するのか

私選弁護人の場合は,被疑者・被告人本人やその配偶者,兄弟姉妹,親などです。

他方,国選弁護人は裁判所(国)が選任します。

 

2 誰を選任するのか

私選弁護人の場合は,誰に依頼するかはもちろん自由に選ぶことができます。

他方,国選弁護人の場合は,裁判所が国選弁護人として登録された弁護士の中から選ぶことになるので,被疑者・被告人本人らが自由に決めることはできません。

 

3 選任する際の条件は何か

私選弁護人は,選任する弁護士との委任契約によります。

他方,国選弁護人は,貧困その他の事由により弁護人を選任できない場合(現金・預金等の合計が50万円未満のとき)に選任されます。

 

4 いつ選任できるのか

私選弁護人は,逮捕・勾留された場合や起訴された場合に限らず,任意で取調べを受けている段階からでも選任することができます。

他方,国選弁護人は,法定刑が死刑または無期もしくは長期3年を越える懲役もしくは禁固に当たる事件で勾留されている場合には,起訴前でも選任することができますが,それ以外に事件については,原則として起訴後に選任されることになります。

 

 以上の通り,私選弁護人,国選弁護人にはいくつか相違点はありますが,弁護人として有する権限や,行うべき弁護活動は同じです。

 ただ,十分な弁護活動を行うためには,早めに対応しておくことが必要かつ重要だと思われます。

 

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