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【重要なお知らせ】原香苗弁護士退職のお知らせ

2026-01-05

平素より結の杜総合法律事務所をご利用いただき、誠にありがとうございます。

このたび、当事務所所属の原 香苗弁護士は、令和7年12月31日をもって当事務所を退職いたしました。

また、従前お知らせいたしました通り、同日付をもって「泉中央支店」は閉業いたしました。

なお、税理士法人につきましては、本店(五橋)に併設された体制で引き続き業務を行っております。

法律相談・税務相談ともに、本店にてこれまでどおり対応可能ですので、ご安心ください。

今後の法律相談・ご依頼につきましては、五橋本店にて承ります。

引き続き、皆様の法的課題の解決に誠心誠意取り組んでまいりますので、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

コラム「保釈とは?保釈の現状・要件・保証金を弁護士が解説」

2026-01-02

Ⅰ 保釈とは何か|刑事事件における重要性

保釈とは、起訴後に勾留されている被告人について、一定の条件のもとで身柄拘束を解き、社会生活を送りながら裁判を受けることを認める制度です。

刑事事件において身体拘束が長期化することは、仕事・家族関係・社会的信用に極めて大きな影響を及ぼします。そのため、
👉 早期に保釈を実現できるかどうかは、刑事弁護における最重要課題の一つ
といえます。


Ⅱ 保釈の現状|日本の保釈率は高いとは言えない

近年、日本における保釈率は緩やかに上昇しています。

  • 令和2年度
    • 勾留された人員:49,216人
    • 保釈された人員:15,431人
    • 保釈率:約31.35%

また、平成28年から令和元年までの推移を見ると、

  • 平成28年:30.47%
  • 平成29年:32.47%
  • 平成30年:33.35%
  • 令和元年:32.87%

と、30%台を維持しているものの、決して高い水準とは言えません。

保釈率を見る際の注意点

この保釈率には、

  • 第1回公判後の保釈
  • 結審後、判決前の短期間の保釈

も含まれています。

否認事件や裁判員裁判では、起訴から初公判まで長期間を要することも多く、実質的には長期間身体拘束が続くケースも少なくありません。

だからこそ、
弁護人による早期・的確な保釈活動が極めて重要
となります。


Ⅲ 保釈の要件|いつ・どのように認められるのか

1 保釈は「起訴後」に請求できる(刑訴法88条)

保釈は、起訴された後にはじめて請求可能です。
一般的な流れは次のとおりです。

  1. 保釈請求書の提出
  2. 検察官の意見聴取
  3. 裁判官との面接
  4. 保釈許可または却下の決定

Ⅳ 権利保釈とは|刑事訴訟法89条

刑事訴訟法89条各号の除外事由がなければ、保釈は「権利」として認められます。

主な除外事由(概要)

  • ① 重罪事件(死刑・無期・長期懲役が予定される罪)
  • ② 一定の前科がある場合
  • ③ 常習性が認められる場合
  • ④ 罪証隠滅のおそれ
  • ⑤ 被害者・証人への働きかけのおそれ
  • ⑥ 逃亡のおそれ

もっとも、これらに形式的に該当しても、直ちに保釈が不可能になるわけではありません。


Ⅴ 裁量保釈とは|平成28年改正で重要性が拡大

裁量保釈(刑訴法90条)

権利保釈の除外事由がある場合でも、
裁判所が「適当」と判断すれば、職権で保釈を許可できます。

平成28年の法改正により、裁判所が考慮すべき事情が明確化されました。

裁判所が考慮する主な事情

  • 逃亡・罪証隠滅のおそれの程度
  • 身体拘束が続くことによる
    • 健康上の不利益
    • 経済的影響
    • 社会生活への支障
    • 防御権行使への影響

裁量保釈を実現するために重要な主張例

  • 捜査がほぼ終了していること
  • 関係者との接触のおそれがないこと
  • 示談成立や被害回復の状況
  • 家族・雇用主などの身元引受人の存在
  • 定職・住居が安定していること
  • 偶発的犯行で再犯のおそれが低いこと

👉 具体的な事実・資料を示して説得的に主張できるかが、結果を大きく左右します。


Ⅵ 保釈保証金はいくらか|相場と減額の可能性

一般的な相場

  • 約150万円~300万円程度

ただし、刑事訴訟法93条2項により、

  • 犯罪の性質・内容
  • 被告人の資産・収入
  • 性格・生活状況

などを考慮し、「相当な金額」でなければならないとされています。

そのため、

  • 資力が乏しい
  • 逃亡のおそれが低い

といった事情を丁寧に主張・立証すれば、
👉 150万円未満となるケースも実際に存在します。


Ⅶ 保釈が却下された場合の対応

保釈が却下されても、

  • 準抗告
  • 抗告
  • 再度の保釈請求

など、引き続き身体解放を目指す手段は残されています。

あきらめず、状況の変化や追加資料を踏まえて再チャレンジすることが重要です。


Ⅷ 弁護士に早期相談する重要性

保釈は、

  • 弁護士の経験・判断力・主張の組み立て方
  • 裁判官・検察官への説明力

によって、結果が大きく左右されます。

特に、
「起訴直後の初回保釈請求」
が極めて重要です。


Ⅸ 最後に|刑事事件・保釈のご相談はお早めに

保釈は、被告人本人だけでなく、
ご家族の生活・将来を守るためにも極めて重要な制度です。

結の杜総合法律事務所では、

  • 刑事事件の今後の見通し
  • 保釈の可能性
  • 費用・手続の流れ

について、弁護士が直接・丁寧にご説明いたします。

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まずはお気軽にご相談ください。

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コラム「破産するおそれのある会社から事業譲渡を受ける際のリスクとは― 倒産前M&A・事業譲受で必ず押さえるべき法的注意点 ―」

2025-12-26

1 はじめに|「安く買える事業」には落とし穴がある

物価高や景気低迷が続く中、資金繰りに苦しむ企業が事業の一部を譲渡するケースは年々増えています。
一方で、譲受側から見れば、

  • 「有望な事業を安価に取得できるのではないか」
  • 「同業他社の顧客・ノウハウを引き継げるのではないか」

と考え、前向きに検討されることも少なくありません。

しかし、譲渡元の会社が破産に近い状態にある場合
事業譲渡そのものが後から覆される、極めて重大なリスクが潜んでいます。

本コラムでは、
破産するおそれのある会社から事業譲渡を受ける際に問題となる主な法的リスクと注意点を、実務・裁判例を踏まえて解説します。


2 破産管財人による「否認権」とは|事業譲渡が無効になるリスク

(1)否認権の概要

譲渡会社が破産した場合、
破産管財人は、破産手続開始前に行われた一定の取引を「否認」する権限を有します(破産法160条以下)。

事業譲渡が否認されると、

  • 譲り受けた事業・資産の返還
  • 返還できない場合は金銭による価額償還

を求められる可能性があります。

つまり、正規の手続きを踏んで契約したとしても、安全とは限らないのです。


(2)事業譲渡で問題となりやすい否認類型

事業譲渡との関係で、特に問題となるのは以下の類型です。

① 詐害行為否認(破産法160条1項1号・2号)

  • 破産者が債権者を害することを知りながら行った行為
  • 支払停止後などに行われ、債権者に不利益を与える行為

👉 譲受会社が「資金繰り悪化」や「破産の危険」を知っていた場合、否認される可能性が高まります。

② 無償否認(破産法160条3項)

  • 無償、または無償と同視できるほど不当に低廉な価格での譲渡

👉 「格安での事業譲受」は、極めて危険です。


(3)裁判例から見る否認リスク

裁判例では、

  • 実質的に無償で取引先関係を移転させた事案につき無償否認を認めた例
  • 事業譲渡について詐害行為否認を認め、価額償還を命じた例

など、譲受会社に厳しい判断が数多く示されています。


3 破産していなくても要注意|債権者の「詐害行為取消権」

(1)民法上の詐害行為取消権

譲渡会社がまだ破産していない場合でも、
債権者は民法424条以下に基づき、事業譲渡の取消しを求めることができます。

  • 債務者が債権者を害することを知ってした行為
  • 譲受人も害意を知っていた場合

には、取消しが認められる可能性があります。

(2)期間制限にも注意

  • 債権者が事実を知ってから2年
  • 行為時から10年

を経過すると行使できなくなりますが、
取引後、長期間リスクが残る点は看過できません。


4 商号続用による責任|社名を引き継ぐリスク

事業譲受後、譲渡会社の商号を引き続き使用する場合
譲受会社が譲渡会社の債務についても責任を負う可能性があります(会社法22条)。

  • Webサイト
  • 商品パッケージ
  • 名刺・看板

などの扱いには、特に注意が必要です。


5 詐害的事業譲渡における譲受会社の責任(会社法23条の2)

譲渡会社が、

  • 債権者を害することを知りながら事業譲渡を行った場合

には、
譲受会社は、承継した財産の価額を限度として責任を負う可能性があります。

もっとも、破産・再生等の法的倒産手続が開始されている場合には、
この責任が否定されるケースもあり、事案ごとの精緻な判断が不可欠です。


6 まとめ|倒産前事業譲渡は「専門家関与」が不可欠

破産するおそれのある会社からの事業譲受は、

  • 否認権
  • 詐害行為取消権
  • 商号続用責任
  • 譲受会社の直接責任

といった複数の重大リスクを伴います。

特に、

  • 不当に安い価格
  • 無償に近い譲渡
  • 譲渡会社の資金繰り悪化を認識している場合

には、後日、事業を失う可能性すらあることを十分理解しておく必要があります。


【経営者の皆様へ】事業譲渡・M&Aは事前相談が重要です

結の杜総合法律事務所では、

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とお悩みの方は、契約前に必ずご相談ください。
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コラム「遺留分侵害額の算定方法とは?― 生前贈与・遺言がある場合の具体的な計算と注意点を弁護士が解説 ―」

2025-12-19

1 はじめに|「全財産を長男に」という遺言でも、何ももらえないとは限りません

相続において、次のようなご相談は非常に多く寄せられます。

Q
「夫が『全財産を長男に相続させる』という遺言を残して亡くなりました。
相続人である私や二男には、何か請求できる権利はあるのでしょうか。
また、遺留分侵害額はどのように算定するのですか。」

A
遺言によって相続分が指定されていても、一定の相続人には「遺留分」が保障されています。
遺留分侵害額は、
①相続開始時の財産+②一定期間内の生前贈与-③債務
によって算定され、その金額に法定相続分と遺留分割合を乗じて計算します。

本コラムでは、遺留分侵害額の具体的な算定方法について、条文・判例を踏まえながら、実務上問題となりやすいポイントを中心にわかりやすく解説します。


2 遺留分侵害額の基本的な計算式

遺留分を算定するための財産の価額は、次の式で計算します(民法1043条1項)。

遺留分算定の基礎財産

① 相続開始時に被相続人が有していた積極財産

② 遺留分算定の対象となる生前贈与

③ 被相続人の債務(借金・未払金など)

この金額に、

  • 各相続人の法定相続分
  • 各相続人の遺留分割合

を掛け合わせた額が、具体的な遺留分額となります。

相続や遺言によって取得した財産がこの金額に満たない場合、不足分について遺留分侵害額請求を行うことができます。

※遺留分侵害額の算定時点は相続開始時であり、相続開始後に誰かが債務を弁済していても、原則として算定に影響はありません(最判平成8年11月26日)。


3 「相続開始時に有していた財産」とは何か

ここでいう「財産」とは、被相続人の積極財産を指します。

(1)算入されるもの

  • 不動産
  • 預貯金
  • 株式・投資信託
  • 売掛金・貸付金 など

(2)算入されないもの

  • 祭祀財産(仏壇・位牌・墓地等)(民法896条・897条)

(3)評価が難しい財産がある場合

条件付き権利や評価困難な権利については、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価によって価格を定めます(民法1043条2項)。


4 生前贈与はどこまで遺留分算定に含まれるのか

生前贈与を自由に認めてしまうと、遺留分制度が形骸化します。一方で、すべてを遡及すると取引の安全が害されます。
そのため、民法は次のようなルールを定めています(民法1044条)。

(1)原則

  • 相続開始前1年以内の贈与
     → 原則としてすべて算入
  • 1年以上前の贈与
     → 贈与者・受贈者双方が「遺留分権利者に損害を加えることを知っていた場合」のみ算入

(2)相続人への贈与の特則

相続人に対する贈与については、
相続開始前10年間にされた「特別受益」に該当する贈与が算入対象となります(民法1044条3項)。

(3)贈与と同視される行為

  • 無償の信託利益の供与
  • 共有持分の放棄
  • 寄附行為 なども、贈与と同様に扱われます。

5 不相当な対価での売買(実質的な贈与)

時価とかけ離れた価格で行われた有償行為については、
当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知っていた場合に限り、
贈与とみなされ、遺留分算定の対象となります(民法1045条2項)。


6 贈与の評価時点はいつか

  • 相続開始前1年以内の贈与
     → 贈与契約時を基準(通説・裁判例)
  • 金銭贈与
     → 相続開始時の貨幣価値に換算して評価(最判昭和51年3月18日)

7 控除される「債務」の範囲

遺留分算定において控除される債務には、以下が含まれます。

(1)含まれるもの

  • 借金・未払金
  • 租税・公租公課
  • 罰金などの公法上の債務

(2)含まれないもの

  • 相続税
  • 遺産管理費用
  • 遺言書検認申立費用 など

相続人自身が被相続人に対して有していた債権・債務についても、混同による消滅を前提とせず、相続開始時の客観的財産状態を基準に判断されます(さいたま地裁平成21年5月15日判決)。


8 「全財産を一人に相続させる」遺言がある場合の算定

相続人の一人に全財産を相続させる遺言がある場合でも、他の相続人は遺留分侵害額請求を行うことができます。

この点につき、最高裁平成21年3月24日判決は、
相続債務も含めて指定相続人が承継するのが原則としたうえで、
遺留分侵害額の算定において、
遺留分権利者の法定相続分に相当する債務額を加算することはできない
と明確に判断しています。


9 「遺留分権利者に損害を加えることを知っていた」とは?

贈与当事者に悪意や害意まで必要ではありませんが、

  • 贈与財産が残存財産を上回ること
  • 将来、財産状況に大きな変動がないこと

などを具体的に認識していたことが必要とされています(大判昭和11年6月17日)。


10 まとめ|遺留分侵害額の算定は専門的判断が不可欠です

遺留分侵害額の算定は、

  • 生前贈与の有無・時期
  • 不動産や株式の評価
  • 債務の取扱い
  • 遺言の内容

など、高度な法的判断と実務経験が不可欠です。

少しの評価の違いで、請求できる金額が大きく変わることも珍しくありません。


11 弁護士への相談のご案内

結の杜総合法律事務所では、

  • 遺留分侵害額請求が可能かどうか
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『令和8年1月の土曜相談日』のお知らせ

2025-12-16

弁護士法人結の杜総合法律事務所では、原則として毎月2回、土曜日も法律相談を受け付けております(完全予約制)。土曜相談をご希望の方は、直近の営業日までに、お電話またはお問い合わせフォームからお申し込みください【新規のお客様は初回1時間無料

なお、令和7年12月より土曜相談日を月2回に変更させていただきます。皆様にはご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解の程よろしくお願い申し上げます。

令和8年1月の相談日は次の通りです。

① 1月17日(土)(担当弁護士:髙橋)

② 1月31日(土)(担当弁護士:三塚)

お時間については、ご予約時にご希望をお伺いして決めさせていただきます。

相談場所は、原則として五橋本店となります。

(なお、ご予約状況によってはご希望に添えない場合もございますので、予めご了承ください。)

また、当事務所では、直接面談形式の法律相談に加え、「zoom」アプリを利用したテレビ電話形式での法律相談も行っております。こちらもぜひご活用ください(詳しくはこちら)。

皆様のご予約をお待ちしております。

コラム「交通事故における損益相殺とは?|示談金が減額される仕組みを弁護士が徹底解説」

2025-12-12

1 はじめに

交通事故の被害者が、治療費や休業損害などとは別に、労災保険・自賠責保険金・各種社会保険から給付を受けた場合、それらが損害賠償から差し引かれるのか——。
示談交渉の現場では、ほぼ必ず問題となる重要な論点です。

本コラムでは、交通事故の損害賠償で必ず押さえておくべき 「損益相殺」 について、裁判例をふまえてわかりやすく解説します。


2 損益相殺とは?(基本概念)

損益相殺とは、交通事故などの不法行為による損害賠償額を算定する際に、

事故を原因として損害だけでなく利益も受けた場合、その利益を損害額から控除し、公平な負担を図る考え方

をいいます。

法律上の明文規定はありませんが、
「損害の公平な分担」(民法709条の趣旨)に基づく重要な法理として確立しています。


3 交通事故で損益相殺の対象となる主なもの(実務でよく問題になる給付)

損益相殺の対象になるかどうかは、

  • 給付の目的・趣旨
  • 加入費用の負担者
  • 加害者に対する代位取得の有無

などを総合的に考慮して判断されます。

① 自賠責保険金

自賠責保険は被害者救済を目的とした制度で、支払われる保険金は損益相殺の対象とされます(最判昭39・5・12)。
政府保障事業の填補金も同様です。

② 労災保険の給付金

労災保険給付は損害を填補する性質を持ち、代位取得の規定(労災12の4)もあることから、損益相殺の対象です(最判平8・2・23)。

ただし、

  • 休業特別支給金
  • 障害特別支給金

などの「特別支給金」は損害補填が目的ではないため、損益相殺の対象外とされています。

③ 各種社会保険の給付(健康保険・厚生年金・共済など)

損害と同質性が認められる場合、損益相殺の対象となります。

例:

  • 障害厚生年金(最判平11・10・22)
  • 遺族厚生年金(最判平16・12・20)
  • 障害基礎年金(最判平11・10・22)
  • 健康保険の傷病手当金・高額療養費 など

④ 人身傷害補償保険金

実損填補型であり、代位規定も存在するため、損益相殺の対象です(最判平20・10・7)。
ただし、控除される金額は「自己過失分を超えた部分」に限定されます。


4 損益相殺ができる範囲(費目ごとの制約)

損益相殺は、同じ損害項目間でのみ行われるという重要な原則があります。

例えば、

  • 労災の休業補償給付 → 休業損害(逸失利益)から控除
  • 慰謝料から控除することは不可(最判昭58・4・19)
  • 積極損害から控除することも不可(最判昭62・7・10)

どの費目からどこまで控除されるかは、示談交渉・裁判でも頻繁に争点になります。


5 損益相殺ができる範囲(将来給付の扱い・時的制約)

年金給付や将来の介護給付など、将来の給付が確定していないものは原則として損益相殺の対象となりません(最判平5・3・24)。

理由:

  • 将来の給付は不確実性がある
  • 債権取得のみでは現実の補填とはいえない

ただし、政府保障事業との関係では特則があり、
将来受給予定分も含めて控除されるという裁判例があります(最判平21・12・17)。


6 生命保険は損益相殺の対象になるか?(結論:ならない)

生命保険金は、

  • 契約者が支払った保険料の対価
  • 事故と無関係に支払われるもの

であることから、損益相殺の対象外です(最判昭39・9・25)。

傷害保険などの定額給付型保険も同様です。


7 搭乗者傷害保険金は損益相殺の対象か?(対象外)

搭乗者傷害保険は、

  • 加害者に代位取得しない
  • 損害補填ではなく搭乗者保護が目的

であるため、損益相殺の対象外とされています(最判平7・1・30)。


8 自損事故保険金も損益相殺の対象外

自損事故保険金も生命保険に近い性質を持ち、定額給付・代位なしのため、損益相殺の対象外と判断されています(東京高判昭59・5・31)。


9 まとめ:損益相殺は極めて複雑。示談前に弁護士へ相談すべき理由

損益相殺は、

  • 何が控除されるか
  • どこから控除されるか
  • 控除できる時点

など、裁判例が多数存在し非常に複雑です。

保険会社が最初に提示する金額は、裁判で認められる金額より低いことが一般的です。

一度示談書にサインしてしまうとやり直しはできません。
そのため、示談提案があった場合は、必ず弁護士によるチェックを受けることをおすすめします。


結の杜総合法律事務所へのご相談について

当事務所では、交通事故に関する損害賠償・示談交渉・後遺障害申請などについて、
弁護士が直接、今後の流れや費用を丁寧にご説明します。
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弁護士費用特約があれば、相談料・弁護士費用の自己負担は原則ゼロ

まずは保険証券をご確認いただくか、保険会社へお問い合わせください。


👉 [交通事故に関するお問い合わせはこちら]

【重要なお知らせ】泉中央支店閉業のお知らせ(令和7年12月末)

2025-12-05

平素より、弁護士法人結の杜総合法律事務所をご利用いただき、誠にありがとうございます。
このたび、当事務所では事業再編および業務効率化の一環として、
「泉中央支店」を令和7年(2025年)12月末日をもって閉業することとなりました。
これまで泉中央支店をご利用いただいた皆様には、心より御礼申し上げます。
閉業後の業務につきましては、仙台五橋本店および東京支店にて引き続きご相談・ご依頼を承りますので、ご安心ください。
■ 閉業日
令和7年12月31日(予定)
■ 閉業後の対応について

  • 現在ご依頼中の案件は、担当弁護士がそのまま職務を遂行いたします。
  • 新規のご相談・ご依頼は、仙台五橋本店、東京支店にて通常どおり受け付けております。
  • これまで泉中央支店をご利用いただいていた方も、支店閉業後は全ての窓口でご相談いただけます。

■ お問い合わせ先
弁護士法人結の杜総合法律事務所
(仙台五橋本店)
〒980-0022 仙台市青葉区五橋一丁目1番17号 仙台ビルディング駅前館9階
TEL:022-797-0741
FAX:022-797-0641

当事務所では、今後もより質の高いリーガルサービスをご提供できるよう、仙台・東京の2拠点において体制強化を図ってまいります。また、仙台五橋本店には、税理士法人の支店が併設されておりますので、今後も法律分野のみならず、税務・会計分野に関するご相談につきましても、引き続きワンストップでご相談いただけます。
皆様にはご不便、ご迷惑をおかけいたしますが、職員一丸となって職務を遂行して参りますので、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

コラム「離婚原因と離婚が認められる基準(許否基準)をわかりやすく解説」

2025-12-05

1 はじめに|不貞をした夫から離婚請求された…応じる必要はある?

ご相談例
「夫は、私の暴言に耐えられないと言って突然家を出ましたが、実際には女性と同棲するためだったことが判明しました。私は不貞をした夫から離婚を求められる理由はないと思いますし、応じる気持ちもありません。このような場合でも離婚しなければならないのでしょうか。」

回答のポイント(結論)
・協議離婚や調停で話し合いが整わない場合、離婚訴訟に進みます。
・裁判所が離婚を認めるのは、「民法770条の離婚原因」がある場合に限られます。
・不貞をした側(有責配偶者)からの離婚請求は、一定の条件を満たさなければ認められないことがあります。

離婚原因の有無、有責配偶者からの離婚請求が認められるかどうかが大きなポイントになります。


2 離婚までの手続の流れ|協議→調停→(審判)→訴訟

夫婦の離婚方法は次の4つです。

  1. 協議離婚(民763)
  2. 調停離婚(家事244・268①)
  3. 審判離婚(家事284①〜③)
  4. 裁判上の離婚(民770)

協議でまとまらなければ、基本的には、家庭裁判所の調停 → 訴訟の順で進みます(審判離婚は比較的少数)。


3 離婚原因とは|民法770条の5つの類型

(1)離婚の訴えができるケース

民法770条1項で定める離婚原因は次の5つです。

  1. 不貞行為(配偶者以外との性的関係)
  2. 悪意の遺棄(正当理由なく同居・扶助義務を放棄)
  3. 3年以上の生死不明
  4. 強度の精神病で回復の見込みがないもの
  5. 婚姻を継続し難い重大な事由

①〜④は「具体的離婚原因」、⑤は「抽象的離婚原因」と呼ばれます。
また、①②は有責的離婚原因、③④は非有責的離婚原因、⑤はいずれも該当し得ます。

裁判所は、①〜④の事由があっても、夫婦関係の全事情を考慮し「婚姻を継続すべき相当性」があれば離婚を認めないことがあります(770条2項)。

(2)不貞行為

・自由意思に基づき配偶者以外と性的関係を結ぶこと。
・性的行為類似行為も、夫婦共同生活の平和を侵害する程度によって不貞と評価されることがある(東京地判令3・2・16)。
・同性間の性的行為も「婚姻を継続し難い重大な事由」とされた例があります。

(3)悪意の遺棄

正当な理由なく同居・協力・扶助義務(民752)に反すること。
やむを得ない事情がある場合は悪意の遺棄とは言えません。

(4)3年以上の生死不明

「最後に生存が確認できた時点」から起算します。

(5)強度の精神病

・婚姻生活が維持できないほどの精神疾患
・長期間の治療でも回復のめどが立たないこと
・療養環境の確保が図られているかにより判断が変わる(最判昭33・7・25、昭45・11・24)

(6)婚姻を継続し難い重大な事由の具体例

代表的なもの(裁判例ベース):

  1. 暴行・虐待
  2. 暴言・侮辱
  3. 家庭の放置
  4. 働く意欲の欠如
  5. 過度の浪費・借金
  6. 飲酒・薬物問題
  7. 背信行為
  8. 長期間の別居
  9. 親族との不和
  10. 訴訟・告訴
  11. 過度な宗教活動
  12. 同性愛
  13. 性生活の異常
  14. 病気・障害
  15. 性格の不一致・価値観の相違
  16. 愛情の喪失 ほか

特に「長期別居」(例:4年10か月で破綻と判断した例あり)は、重要な判断材料となりますが、
別居7年でも「破綻といえない」とされた例もあり、事情次第で結論が変わります。

離婚原因の有無は、客観的な事実を丁寧に主張・立証できるかが極めて重要です。


4 有責配偶者からの離婚請求|不貞をした側でも離婚できるのか?

従来、有責配偶者(不貞・暴力など夫婦関係破綻の原因を作った側)からの離婚請求は原則認められませんでした(最判昭27・2・19)。

しかし最高裁は大きく考え方を転換し、
一定の要件を満たせば、有責配偶者からの離婚請求も認められると判断しています。

【最高裁(昭62・9・2)による要件】

以下のすべてに該当する場合、離婚が認められ得ます。

  1. 長期間の別居(例:別居36年)
  2. 夫婦に未成熟子がいないこと
  3. 離婚しても相手が極めて苛酷な状態に陥らないこと(生活・精神・社会的側面)

その後の裁判例では、
・別居8年でも有責配偶者からの離婚請求を認めたもの
・未成熟子がいても事情により認められたもの
など、社会情勢を踏まえ柔軟な判断がされています。


5 最後に|離婚原因の有無・離婚が認められるかはケースごとに大きく異なります

離婚原因の判断は、判例・事実関係・婚姻生活の状況を踏まえた総合判断となり、専門的な知識が必要です。

結の杜総合法律事務所では、以下の点を丁寧にご説明します。

  • 離婚原因が認められるか
  • 有責配偶者からの離婚請求に応じるべきか
  • 調停・訴訟へ進むべきか
  • 必要な証拠や主張整理
  • 弁護士費用・解決までの流れ

無理な勧誘は一切ありません。
まずはお気軽にご相談ください。

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年末年始休業のお知らせ

2025-12-04

誠に勝手ながら、弁護士法人結の杜総合法律事務所は、以下の日程を年末年始休業とさせて頂きます。

【年末年始休業期間】 12月27日(土)~1月4日(日)

【業務開始日】  1月5日(月) ~平常どおり、営業致します。

 休業期間中のFAX、E-Mail、ホームページ専用フォームによるお問い合わせは受け付けておりますが、お問い合わせに対する回答は、1月5日(月) 以降になりますのでご了承くださいませ。 ご不便をおかけいたしますが、何卒ご了承下さいますようお願い申し上げます。

コラム「遺言執行者とはどのようなことをするの?|選任が必要なケースと手続を徹底解説」

2025-11-28

1 はじめに

「遺言書があるのに遺言執行者の指定がない。相続人は遺言執行者を選任しなければならないのか?」
「家庭裁判所で遺言執行者を選任する場合、どんな手続や書類が必要なのか?」

遺言・相続のご相談では、このような質問を多く頂きます。
この記事では、遺言執行者が必要となるケース、選任手続、就任後の具体的な業務内容まで専門家が分かりやすく解説します。


2 遺言執行者はいつ必要?|選任の要否を分かりやすく解説

遺言書の内容は大きく次の3つに分かれ、内容によって「遺言執行者が必須かどうか」が異なります。

① 遺言執行者だけが執行できる事項(必ず選任が必要)

  • 推定相続人の廃除(民893)
  • 推定相続人の廃除の取消し(民894②)
  • 認知(民781②)

これらは遺言執行者がいなければ法的に効力を実現できない内容のため、遺言執行者の選任が不可欠です。

② 遺言執行者・相続人どちらでも執行できる事項(トラブル防止のため選任が望ましい)

  • 遺贈(民964)
  • 一般財団法人の設立(一般法人152②)
  • 信託の設定(信託3二)
  • 生命保険金受取人の変更

相続人間で意見が分かれたり、協力を得にくい場合は、遺言執行者を選任することで手続がスムーズになり、争いの予防につながります。

③ 遺言執行が不要な事項(選任不要)

  • 相続分の指定(民902)
  • 遺産分割方法の指定(民908)
  • 遺産分割の禁止(民908)
  • 遺言執行者の指定(民1006①)
  • 遺言の撤回 など

上記のように、内容により遺言執行者の必要性は異なります。
遺言の種類・構成を正しく判定することが重要であり、専門家に確認するメリットの大きいポイントです。


3 遺言執行者を家庭裁判所で選任する手続|必要書類・期間の目安

遺言執行者が指定されていない場合や、指定された人が就任できない事情がある場合には、家庭裁判所で選任手続を行います(民1010)。

■ 選任申立てができる人(利害関係人)

  • 相続人
  • 受遺者
  • 遺言者の債権者
  • 相続財産管理人
  • 相続財産清算人 など

■ 管轄の家庭裁判所

被相続人の最後の住所地の家庭裁判所(家事209①)。

■ 必要書類(標準的なもの)

  • 被相続人の戸籍(除籍・改製原戸籍)
  • 遺言書(写しまたは検認調書謄本)
  • 遺言執行者候補者の住民票等
  • 利害関係を証する資料(戸籍等)

※遺言書が検認済の場合、家庭裁判所に記録が残っていれば一部省略が可能。

■ どんな場合に裁判所は選任する?

  • 遺言内容に「遺言執行者必須事項」が含まれる
  • 相続人間の対立があり、遺言の内容が実現できない
  • 相続人の協力が得られない
  • 相続財産が多岐にわたり管理が複雑

遺贈が絡む案件や相続人が複数いるケースでは、家庭裁判所での選任は非常に一般的です。


4 遺言執行者の具体的な業務内容(時系列で理解)

遺言執行者は、遺言内容を実現するために幅広い権限と義務を持ちます(民1012)。

(1)遺言書の検認手続(必要な場合)

自筆証書遺言の場合、家庭裁判所で「検認」を行います(民1004)。
検認前に開封してしまうと過料の対象となるため注意が必要です。

※公正証書遺言・法務局保管の自筆証書遺言は検認不要。

(2)遺言書の正本・謄本の取得(公正証書遺言の場合)

相続手続で必要となるため、公証役場で請求して取得します。

(3)遺言書情報証明書の取得(自筆証書遺言・法務局保管)

(4)遺言の有効性の確認(方式・遺言能力・内容)

方式違背や遺言能力の欠如が疑われる場合、無効確認訴訟が検討されます。

(5)相続人・受遺者の調査・通知(民1007)

出生から死亡までの戸籍を取り寄せて相続人を確定し、遺言内容を通知します。
受遺者に対しては遺贈の受諾の意思確認も必要です。

(6)財産目録の作成・交付(民1011)

不動産・預貯金・株式・保険等を調査し、相続財産を目録にまとめ相続人へ交付。

(7)遺言の実現(執行)

  • 不動産の名義変更
  • 銀行口座の払い戻し
  • 遺贈財産の引渡し
  • 廃除手続 等
    遺言執行者は「善良な管理者の注意義務」を負いながら業務を行います。

(8)遺言執行終了の通知

執行が完了したら相続人等に終了を通知します(民1020)。

(9)報酬・費用の精算

遺言に記載がある場合はその通り。
ない場合は相続人との協議、合意できなければ家庭裁判所が決定します。


5 まとめ|遺言執行者の選任は専門家に相談することで安心・確実に進められます

遺言執行者は、

  • 遺言書の確認
  • 相続人の調査
  • 名義変更
  • 遺贈手続
  • 財産管理
    など、法律知識と実務経験が必要な場面が多く、専門性の高い業務です。

特に、

  • 相続人間の対立がある
  • 不動産・預貯金・株式等の財産が複雑
  • 遺贈がある
  • 廃除や認知など法律行為を含む
    といったケースでは、専門家が遺言執行者になることでスムーズに手続が進みます。

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