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コラム「交通事故における損益相殺とは?|示談金が減額される仕組みを弁護士が徹底解説」
1 はじめに
交通事故の被害者が、治療費や休業損害などとは別に、労災保険・自賠責保険金・各種社会保険から給付を受けた場合、それらが損害賠償から差し引かれるのか——。
示談交渉の現場では、ほぼ必ず問題となる重要な論点です。
本コラムでは、交通事故の損害賠償で必ず押さえておくべき 「損益相殺」 について、裁判例をふまえてわかりやすく解説します。
2 損益相殺とは?(基本概念)
損益相殺とは、交通事故などの不法行為による損害賠償額を算定する際に、
事故を原因として損害だけでなく利益も受けた場合、その利益を損害額から控除し、公平な負担を図る考え方
をいいます。
法律上の明文規定はありませんが、
「損害の公平な分担」(民法709条の趣旨)に基づく重要な法理として確立しています。
3 交通事故で損益相殺の対象となる主なもの(実務でよく問題になる給付)
損益相殺の対象になるかどうかは、
- 給付の目的・趣旨
- 加入費用の負担者
- 加害者に対する代位取得の有無
などを総合的に考慮して判断されます。
① 自賠責保険金
自賠責保険は被害者救済を目的とした制度で、支払われる保険金は損益相殺の対象とされます(最判昭39・5・12)。
政府保障事業の填補金も同様です。
② 労災保険の給付金
労災保険給付は損害を填補する性質を持ち、代位取得の規定(労災12の4)もあることから、損益相殺の対象です(最判平8・2・23)。
ただし、
- 休業特別支給金
- 障害特別支給金
などの「特別支給金」は損害補填が目的ではないため、損益相殺の対象外とされています。
③ 各種社会保険の給付(健康保険・厚生年金・共済など)
損害と同質性が認められる場合、損益相殺の対象となります。
例:
- 障害厚生年金(最判平11・10・22)
- 遺族厚生年金(最判平16・12・20)
- 障害基礎年金(最判平11・10・22)
- 健康保険の傷病手当金・高額療養費 など
④ 人身傷害補償保険金
実損填補型であり、代位規定も存在するため、損益相殺の対象です(最判平20・10・7)。
ただし、控除される金額は「自己過失分を超えた部分」に限定されます。
4 損益相殺ができる範囲(費目ごとの制約)
損益相殺は、同じ損害項目間でのみ行われるという重要な原則があります。
例えば、
- 労災の休業補償給付 → 休業損害(逸失利益)から控除
- 慰謝料から控除することは不可(最判昭58・4・19)
- 積極損害から控除することも不可(最判昭62・7・10)
どの費目からどこまで控除されるかは、示談交渉・裁判でも頻繁に争点になります。
5 損益相殺ができる範囲(将来給付の扱い・時的制約)
年金給付や将来の介護給付など、将来の給付が確定していないものは原則として損益相殺の対象となりません(最判平5・3・24)。
理由:
- 将来の給付は不確実性がある
- 債権取得のみでは現実の補填とはいえない
ただし、政府保障事業との関係では特則があり、
将来受給予定分も含めて控除されるという裁判例があります(最判平21・12・17)。
6 生命保険は損益相殺の対象になるか?(結論:ならない)
生命保険金は、
- 契約者が支払った保険料の対価
- 事故と無関係に支払われるもの
であることから、損益相殺の対象外です(最判昭39・9・25)。
傷害保険などの定額給付型保険も同様です。
7 搭乗者傷害保険金は損益相殺の対象か?(対象外)
搭乗者傷害保険は、
- 加害者に代位取得しない
- 損害補填ではなく搭乗者保護が目的
であるため、損益相殺の対象外とされています(最判平7・1・30)。
8 自損事故保険金も損益相殺の対象外
自損事故保険金も生命保険に近い性質を持ち、定額給付・代位なしのため、損益相殺の対象外と判断されています(東京高判昭59・5・31)。
9 まとめ:損益相殺は極めて複雑。示談前に弁護士へ相談すべき理由
損益相殺は、
- 何が控除されるか
- どこから控除されるか
- 控除できる時点
など、裁判例が多数存在し非常に複雑です。
保険会社が最初に提示する金額は、裁判で認められる金額より低いことが一般的です。
一度示談書にサインしてしまうとやり直しはできません。
そのため、示談提案があった場合は、必ず弁護士によるチェックを受けることをおすすめします。
結の杜総合法律事務所へのご相談について
当事務所では、交通事故に関する損害賠償・示談交渉・後遺障害申請などについて、
弁護士が直接、今後の流れや費用を丁寧にご説明します。
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宮城県仙台市に拠点を置く弁護士法人結の杜総合法律事務所は、2012年の開設以来、地域の皆様の法的ニーズに応えてまいりました。代表の髙橋和聖は、地元宮城で生まれ育ち、弁護士・税理士としての資格を持ち、法律と税務の両面からサポートを提供しています。当事務所は、青葉区五橋に本店、泉区泉中央に支店を構え、2022年10月には東京支店も開設しました。これからも、仙台・宮城の皆様に寄り添い、親しみやすい法律事務所として、質の高いサービスを提供してまいります。
【重要なお知らせ】泉中央支店閉業のお知らせ(令和7年12月末)
平素より、弁護士法人結の杜総合法律事務所をご利用いただき、誠にありがとうございます。
このたび、当事務所では事業再編および業務効率化の一環として、
「泉中央支店」を令和7年(2025年)12月末日をもって閉業することとなりました。
これまで泉中央支店をご利用いただいた皆様には、心より御礼申し上げます。
閉業後の業務につきましては、仙台五橋本店および東京支店にて引き続きご相談・ご依頼を承りますので、ご安心ください。
■ 閉業日
令和7年12月31日(予定)
■ 閉業後の対応について
- 現在ご依頼中の案件は、担当弁護士がそのまま職務を遂行いたします。
- 新規のご相談・ご依頼は、仙台五橋本店、東京支店にて通常どおり受け付けております。
- これまで泉中央支店をご利用いただいていた方も、支店閉業後は全ての窓口でご相談いただけます。
■ お問い合わせ先
弁護士法人結の杜総合法律事務所
(仙台五橋本店)
〒980-0022 仙台市青葉区五橋一丁目1番17号 仙台ビルディング駅前館9階
TEL:022-797-0741
FAX:022-797-0641
当事務所では、今後もより質の高いリーガルサービスをご提供できるよう、仙台・東京の2拠点において体制強化を図ってまいります。また、仙台五橋本店には、税理士法人の支店が併設されておりますので、今後も法律分野のみならず、税務・会計分野に関するご相談につきましても、引き続きワンストップでご相談いただけます。
皆様にはご不便、ご迷惑をおかけいたしますが、職員一丸となって職務を遂行して参りますので、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
宮城県仙台市に拠点を置く弁護士法人結の杜総合法律事務所は、2012年の開設以来、地域の皆様の法的ニーズに応えてまいりました。代表の髙橋和聖は、地元宮城で生まれ育ち、弁護士・税理士としての資格を持ち、法律と税務の両面からサポートを提供しています。当事務所は、青葉区五橋に本店、泉区泉中央に支店を構え、2022年10月には東京支店も開設しました。これからも、仙台・宮城の皆様に寄り添い、親しみやすい法律事務所として、質の高いサービスを提供してまいります。
コラム「離婚原因と離婚が認められる基準(許否基準)をわかりやすく解説」
1 はじめに|不貞をした夫から離婚請求された…応じる必要はある?
ご相談例
「夫は、私の暴言に耐えられないと言って突然家を出ましたが、実際には女性と同棲するためだったことが判明しました。私は不貞をした夫から離婚を求められる理由はないと思いますし、応じる気持ちもありません。このような場合でも離婚しなければならないのでしょうか。」
回答のポイント(結論)
・協議離婚や調停で話し合いが整わない場合、離婚訴訟に進みます。
・裁判所が離婚を認めるのは、「民法770条の離婚原因」がある場合に限られます。
・不貞をした側(有責配偶者)からの離婚請求は、一定の条件を満たさなければ認められないことがあります。
離婚原因の有無、有責配偶者からの離婚請求が認められるかどうかが大きなポイントになります。
2 離婚までの手続の流れ|協議→調停→(審判)→訴訟
夫婦の離婚方法は次の4つです。
- 協議離婚(民763)
- 調停離婚(家事244・268①)
- 審判離婚(家事284①〜③)
- 裁判上の離婚(民770)
協議でまとまらなければ、基本的には、家庭裁判所の調停 → 訴訟の順で進みます(審判離婚は比較的少数)。
3 離婚原因とは|民法770条の5つの類型
(1)離婚の訴えができるケース
民法770条1項で定める離婚原因は次の5つです。
- 不貞行為(配偶者以外との性的関係)
- 悪意の遺棄(正当理由なく同居・扶助義務を放棄)
- 3年以上の生死不明
- 強度の精神病で回復の見込みがないもの
- 婚姻を継続し難い重大な事由
①〜④は「具体的離婚原因」、⑤は「抽象的離婚原因」と呼ばれます。
また、①②は有責的離婚原因、③④は非有責的離婚原因、⑤はいずれも該当し得ます。
裁判所は、①〜④の事由があっても、夫婦関係の全事情を考慮し「婚姻を継続すべき相当性」があれば離婚を認めないことがあります(770条2項)。
(2)不貞行為
・自由意思に基づき配偶者以外と性的関係を結ぶこと。
・性的行為類似行為も、夫婦共同生活の平和を侵害する程度によって不貞と評価されることがある(東京地判令3・2・16)。
・同性間の性的行為も「婚姻を継続し難い重大な事由」とされた例があります。
(3)悪意の遺棄
正当な理由なく同居・協力・扶助義務(民752)に反すること。
やむを得ない事情がある場合は悪意の遺棄とは言えません。
(4)3年以上の生死不明
「最後に生存が確認できた時点」から起算します。
(5)強度の精神病
・婚姻生活が維持できないほどの精神疾患
・長期間の治療でも回復のめどが立たないこと
・療養環境の確保が図られているかにより判断が変わる(最判昭33・7・25、昭45・11・24)
(6)婚姻を継続し難い重大な事由の具体例
代表的なもの(裁判例ベース):
- 暴行・虐待
- 暴言・侮辱
- 家庭の放置
- 働く意欲の欠如
- 過度の浪費・借金
- 飲酒・薬物問題
- 背信行為
- 長期間の別居
- 親族との不和
- 訴訟・告訴
- 過度な宗教活動
- 同性愛
- 性生活の異常
- 病気・障害
- 性格の不一致・価値観の相違
- 愛情の喪失 ほか
特に「長期別居」(例:4年10か月で破綻と判断した例あり)は、重要な判断材料となりますが、
別居7年でも「破綻といえない」とされた例もあり、事情次第で結論が変わります。
離婚原因の有無は、客観的な事実を丁寧に主張・立証できるかが極めて重要です。
4 有責配偶者からの離婚請求|不貞をした側でも離婚できるのか?
従来、有責配偶者(不貞・暴力など夫婦関係破綻の原因を作った側)からの離婚請求は原則認められませんでした(最判昭27・2・19)。
しかし最高裁は大きく考え方を転換し、
一定の要件を満たせば、有責配偶者からの離婚請求も認められると判断しています。
【最高裁(昭62・9・2)による要件】
以下のすべてに該当する場合、離婚が認められ得ます。
- 長期間の別居(例:別居36年)
- 夫婦に未成熟子がいないこと
- 離婚しても相手が極めて苛酷な状態に陥らないこと(生活・精神・社会的側面)
その後の裁判例では、
・別居8年でも有責配偶者からの離婚請求を認めたもの
・未成熟子がいても事情により認められたもの
など、社会情勢を踏まえ柔軟な判断がされています。
5 最後に|離婚原因の有無・離婚が認められるかはケースごとに大きく異なります
離婚原因の判断は、判例・事実関係・婚姻生活の状況を踏まえた総合判断となり、専門的な知識が必要です。
結の杜総合法律事務所では、以下の点を丁寧にご説明します。
- 離婚原因が認められるか
- 有責配偶者からの離婚請求に応じるべきか
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宮城県仙台市に拠点を置く弁護士法人結の杜総合法律事務所は、2012年の開設以来、地域の皆様の法的ニーズに応えてまいりました。代表の髙橋和聖は、地元宮城で生まれ育ち、弁護士・税理士としての資格を持ち、法律と税務の両面からサポートを提供しています。当事務所は、青葉区五橋に本店、泉区泉中央に支店を構え、2022年10月には東京支店も開設しました。これからも、仙台・宮城の皆様に寄り添い、親しみやすい法律事務所として、質の高いサービスを提供してまいります。
年末年始休業のお知らせ
誠に勝手ながら、弁護士法人結の杜総合法律事務所は、以下の日程を年末年始休業とさせて頂きます。
【年末年始休業期間】 12月27日(土)~1月4日(日)
【業務開始日】 1月5日(月) ~平常どおり、営業致します。
休業期間中のFAX、E-Mail、ホームページ専用フォームによるお問い合わせは受け付けておりますが、お問い合わせに対する回答は、1月5日(月) 以降になりますのでご了承くださいませ。 ご不便をおかけいたしますが、何卒ご了承下さいますようお願い申し上げます。
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コラム「遺言執行者とはどのようなことをするの?|選任が必要なケースと手続を徹底解説」
1 はじめに
「遺言書があるのに遺言執行者の指定がない。相続人は遺言執行者を選任しなければならないのか?」
「家庭裁判所で遺言執行者を選任する場合、どんな手続や書類が必要なのか?」
遺言・相続のご相談では、このような質問を多く頂きます。
この記事では、遺言執行者が必要となるケース、選任手続、就任後の具体的な業務内容まで専門家が分かりやすく解説します。
2 遺言執行者はいつ必要?|選任の要否を分かりやすく解説
遺言書の内容は大きく次の3つに分かれ、内容によって「遺言執行者が必須かどうか」が異なります。
① 遺言執行者だけが執行できる事項(必ず選任が必要)
- 推定相続人の廃除(民893)
- 推定相続人の廃除の取消し(民894②)
- 認知(民781②)
これらは遺言執行者がいなければ法的に効力を実現できない内容のため、遺言執行者の選任が不可欠です。
② 遺言執行者・相続人どちらでも執行できる事項(トラブル防止のため選任が望ましい)
- 遺贈(民964)
- 一般財団法人の設立(一般法人152②)
- 信託の設定(信託3二)
- 生命保険金受取人の変更
相続人間で意見が分かれたり、協力を得にくい場合は、遺言執行者を選任することで手続がスムーズになり、争いの予防につながります。
③ 遺言執行が不要な事項(選任不要)
- 相続分の指定(民902)
- 遺産分割方法の指定(民908)
- 遺産分割の禁止(民908)
- 遺言執行者の指定(民1006①)
- 遺言の撤回 など
上記のように、内容により遺言執行者の必要性は異なります。
遺言の種類・構成を正しく判定することが重要であり、専門家に確認するメリットの大きいポイントです。
3 遺言執行者を家庭裁判所で選任する手続|必要書類・期間の目安
遺言執行者が指定されていない場合や、指定された人が就任できない事情がある場合には、家庭裁判所で選任手続を行います(民1010)。
■ 選任申立てができる人(利害関係人)
- 相続人
- 受遺者
- 遺言者の債権者
- 相続財産管理人
- 相続財産清算人 など
■ 管轄の家庭裁判所
被相続人の最後の住所地の家庭裁判所(家事209①)。
■ 必要書類(標準的なもの)
- 被相続人の戸籍(除籍・改製原戸籍)
- 遺言書(写しまたは検認調書謄本)
- 遺言執行者候補者の住民票等
- 利害関係を証する資料(戸籍等)
※遺言書が検認済の場合、家庭裁判所に記録が残っていれば一部省略が可能。
■ どんな場合に裁判所は選任する?
- 遺言内容に「遺言執行者必須事項」が含まれる
- 相続人間の対立があり、遺言の内容が実現できない
- 相続人の協力が得られない
- 相続財産が多岐にわたり管理が複雑
遺贈が絡む案件や相続人が複数いるケースでは、家庭裁判所での選任は非常に一般的です。
4 遺言執行者の具体的な業務内容(時系列で理解)
遺言執行者は、遺言内容を実現するために幅広い権限と義務を持ちます(民1012)。
(1)遺言書の検認手続(必要な場合)
自筆証書遺言の場合、家庭裁判所で「検認」を行います(民1004)。
検認前に開封してしまうと過料の対象となるため注意が必要です。
※公正証書遺言・法務局保管の自筆証書遺言は検認不要。
(2)遺言書の正本・謄本の取得(公正証書遺言の場合)
相続手続で必要となるため、公証役場で請求して取得します。
(3)遺言書情報証明書の取得(自筆証書遺言・法務局保管)
(4)遺言の有効性の確認(方式・遺言能力・内容)
方式違背や遺言能力の欠如が疑われる場合、無効確認訴訟が検討されます。
(5)相続人・受遺者の調査・通知(民1007)
出生から死亡までの戸籍を取り寄せて相続人を確定し、遺言内容を通知します。
受遺者に対しては遺贈の受諾の意思確認も必要です。
(6)財産目録の作成・交付(民1011)
不動産・預貯金・株式・保険等を調査し、相続財産を目録にまとめ相続人へ交付。
(7)遺言の実現(執行)
- 不動産の名義変更
- 銀行口座の払い戻し
- 遺贈財産の引渡し
- 廃除手続 等
遺言執行者は「善良な管理者の注意義務」を負いながら業務を行います。
(8)遺言執行終了の通知
執行が完了したら相続人等に終了を通知します(民1020)。
(9)報酬・費用の精算
遺言に記載がある場合はその通り。
ない場合は相続人との協議、合意できなければ家庭裁判所が決定します。
5 まとめ|遺言執行者の選任は専門家に相談することで安心・確実に進められます
遺言執行者は、
- 遺言書の確認
- 相続人の調査
- 名義変更
- 遺贈手続
- 財産管理
など、法律知識と実務経験が必要な場面が多く、専門性の高い業務です。
特に、
- 相続人間の対立がある
- 不動産・預貯金・株式等の財産が複雑
- 遺贈がある
- 廃除や認知など法律行為を含む
といったケースでは、専門家が遺言執行者になることでスムーズに手続が進みます。
6 当事務所が選ばれる理由|弁護士×税理士によるワンストップ相続サービス
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コラム「非正規労働者(有期契約社員)を契約期間満了前に解雇することはできるのか?」
1 はじめに
物価高騰や景気悪化などにより、人件費の見直しを迫られる企業も増えています。その中で、有期契約の従業員(契約社員・パート・アルバイト等の非正規労働者)を契約期間途中で解雇できるのかというご相談が多く寄せられています。
しかし、有期契約労働者の契約期間中の解雇は、法律上強い制限があり、正社員よりもはるかに厳しい基準で判断される点に注意が必要です。
本コラムでは、企業が知っておくべきポイントを、裁判例も交えながらわかりやすく解説します。
2 有期労働者の「契約期間途中の解雇」は原則認められない
『有期労働契約の途中で労働者を解雇するには、“やむを得ない事由”が必要です。これを欠く解雇は無効となる可能性があります。』
期間の定めのある労働契約(有期契約)は、双方が一定期間働くことを約束するものです。そのため、
契約期間満了前に解雇が認められるのは、極めて例外的なケースに限られます。
(労働契約法17条1項、民法628条)
これは派遣労働者の場合も同様で、派遣先の都合で派遣契約が終了しても、労働者との雇用契約を途中終了させることはできません(プレミアライン事件)。
3 契約期間途中の解雇が認められる「やむを得ない事由」とは
『無期契約(正社員)の解雇よりも厳しい基準で判断されます。』
(1)有期契約期間中の解雇
有期契約の解雇には、
「期間満了まで待てないほどの特別・重大な事情」が必要
と裁判例でされています(大阪運輸振興事件ほか)。
例としては、
- 重大な非違行為
- 重大な経営危機で事業存続が困難
など、極めて深刻なケースが該当します。
なお、途中解雇が無効となった場合でも、その後契約期間が満了した場合は、雇止めの有効性を別途判断することになります(最判令和元年11月7日)。
(2)試用期間中の有期契約労働者の解雇
試用期間中であっても、
- 「客観的合理性・社会通念上の相当性」(三菱樹脂事件)
- 有期契約の「やむを得ない事由」
の双方が必要とされます。
ただし、試用期間の趣旨を考慮して、“やむを得ない事由”の判断はやや緩やかに認められるとした裁判例(東京高判令5・4・5)もあります。
4 裁判例にみる「無効とされた例」「有効とされた例」
▼【期間途中の解雇が無効とされたケース】
- 受注減による人員整理では「やむを得ない事由」に当たらないと判断(東京高決 平21・12・21)
- 塾長の能力不足を理由とした解雇は重大事由とは言えず無効(仙台高 秋田支判 平24・1・25)
- 社員への暴力行為があったが、偶発的で悪質性が低いとして無効(東京地判 平29・5・19)
▼【期間途中の解雇が有効とされたケース】
- 公益法人で収入減が避けられず、業務内容上の事情から給与引下げが不可避と判断され、やむを得ない事由が認められた例(東京高判 平21・11・18)
▼【途中解雇が無効でも、満了時の更新拒否は別途判断される】
- 解雇が無効であっても、契約期間満了による終了について判断すべきとした裁判例(最判 令和元・11・7)
▼【試用期間中の解雇が有効とされたケース】
- 能力不足が著しく、他部署への配置転換も困難で、「やむを得ない事由」を認めた例(東京高判 令5・4・5)
5 途中解雇が有効でも、会社に過失がある場合は損害賠償が必要
『やむを得ない事由の発生について、使用者(会社)に過失があれば損害賠償責任が発生します。』
民法628条により、
- 解雇自体は有効
- しかし、会社の不注意により“やむを得ない事由”が発生した
場合、労働者に対して損害賠償責任を負うことがあります。
人件費削減を目的とした安易な途中解雇は、
解雇無効リスク・損害賠償リスクを抱えるため、慎重な判断が必要です。
6 まとめ(企業が押さえるべきポイント)
- 有期労働者の途中解雇は原則禁止
- 正社員より厳しい「やむを得ない事由」が必要
- 試用期間中でも制限は残る
- 無効とされた裁判例が多数
- 有効な場合でも会社に過失があれば損害賠償
- 雇止めの判断は別途必要
途中解雇は極めてハードルが高く、専門家の判断が不可欠です。
7 労働問題でお困りの企業様へ
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- 従業員の解雇問題
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『令和7年12月の土曜相談日』のお知らせ
弁護士法人結の杜総合法律事務所では、原則として毎月2回、土曜日も法律相談を受け付けております(完全予約制)。土曜相談をご希望の方は、直近の営業日までに、お電話またはお問い合わせフォームからお申し込みください【新規のお客様は初回1時間無料】。
なお、令和7年12月より土曜相談日を月2回に変更させていただきます。皆様にはご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解の程よろしくお願い申し上げます。
令和7年12月の相談日は次の通りです。
① 12月13日(土)(担当弁護士:三塚)
② 12月20日(土)(担当弁護士:高橋)
お時間については、ご予約時にご希望をお伺いして決めさせていただきます。
相談場所は、原則として五橋本店となります。
(なお、ご予約状況によってはご希望に添えない場合もございますので、予めご了承ください。)
また、当事務所では、直接面談形式の法律相談に加え、「zoom」アプリを利用したテレビ電話形式での法律相談も行っております。こちらもぜひご活用ください(詳しくはこちら)。
皆様のご予約をお待ちしております。
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コラム「自己破産における免責とは?手続き・影響・注意点を仙台の弁護士がわかりやすく解説」
あなたが借金の返済に行き詰まり、「もうどうしようもないかも…」と不安を抱えているなら、最終的な手段として検討されるのが「自己破産」です。その中でも、手続き上の山場となるのが 「免責」 の許可です。
本コラムでは、個人(自然人)が自己破産を申し立てた際に、裁判所が免責を許可したときにどのような影響があるのか、どんな場合に免責されない可能性があるのか、さらに手続きの流れや弁護士相談のポイントまで、仙台・宮城で実務を扱う弁護士の視点からわかりやすく解説いたします。
目次
- 免責とは何か?
- 免責を受けるとどうなるか
- 債務の免責
- 保証人・担保物権の影響
- 非免責債権とは
- 免責申立ての手続き/復権
- 免責されない(不許可)ケースとは?
- 主な免責不許可事由(11項目)
- 裁量免責とは
- 仙台・宮城で弁護士に相談すべき理由
- 料金・流れ・安心できる理由
- よくある誤解・Q&A
- まとめ・まずはお気軽にご相談を
1.免責とは何か?
自然人が自己破産を申し立てると、最終的に裁判所が「免責」を許可するかどうかを判断します。免責とは、破産者の債務(支払義務)を法的に免除する制度です。
この「免責」が許可されることで、借金問題から再スタートを切るための重要な鍵となります。
2.免責を受けるとどうなるか
(1)債務の免責
- 破産手続開始決定が確定し、かつ免責許可決定が確定した場合、破産者は 破産債権者に対する債務 について責任を免れます(破産法第253条①)。
- 破産債権とは、破産者に対し破産手続開始前に生じた請求権で、財団債権に該当しないものを指します(破2⑤)。
- 免責許可決定前に支払を約束していても、その責任を免れます。また、免責後に再度支払い約束をしても無効とされる場合が多いです。
(2)保証人・担保物権の影響
主債務者が免責を受けても、 保証人の債務 や 担保物権の実行 には影響を及ぼしません(破253条②)。
つまり、借金を保証していた方・抵当権などが付いていた場合、その請求・実行は別途残ることがあります。読者の皆様にはこの点をきちんと理解して頂くことが重要です。
(3)非免責債権とは
免責しても支払義務が残る債権があります。例として、税金・悪意の不法行為に基づく損害賠償請求・養育費・罰金などが挙げられます(破253①ただし書)。
(4)免責申立ての手続き/復権
- 債務者が破産手続開始の申立てをしたとき、原則として同時に免責許可申立てを行ったものとみなされます(破248④)。
- 免責許可決定が確定した後、破産者は復権(破255条)し、破産による 資格制限 が解除されます。つまり、一定の職業制限・役職制限などから解放され、社会復帰のスタート地点となります。
3.免責されない(不許可)ケースとは?
(1)主な免責不許可事由
破産法は、免責不許可となる具体的な事由を11項目定めています(破252①)。 主なものは以下の通りです。
- 債権者を害する目的での財産隠匿・損壊・債務の仮装など(破252①一)
- 著しく不利益な条件での債務負担・信用取引による不利益処分(破252①二)
- 義務なき担保の供与・債務消滅行為(破252①三)
- 浪費・賭博・その他射幸行為による著しい財産減少・過大債務(破252①四)
- 例えば、度を超えた遊興・高価品購入、仮想通貨の過大投機等が問題となる可能性があります。
- 信用取引における詐術/債務原因となる事実を知りながら取得(破252①五)
- 帳簿隠滅・偽造(破252①六)
- 虚偽の債権者名簿提出(破252①七)
- 裁判所の調査で説明拒絶・虚偽説明(破252①八)
- 破産管財人の職務妨害(破252①九)
- 免責許可決定から7年以内に再申立て等の事由(破252①十)
- 破産法上の義務(説明義務・協力義務等)違反(破252①十一)
(2)裁量免責
上記に該当するとしても、裁判所が「免責許可が相当」と認める事情があれば、免責を許可する 裁量免責 の制度があります(破252②)。 実務上も、免責不許可事由に該当していても、かなりの割合で免責許可が認められているのが現状です。
4.仙台・宮城で弁護士に相談すべき理由
当事務所「結の杜総合法律事務所」は、仙台・宮城を拠点に 自己破産・免責・債務整理 を多数取り扱っており、地元ならではの安心感ときめ細やかなサポートを強みとしています。
以下のような点で、相談の価値があります。
- 地元対応:宮城県・仙台市での申立て実務を熟知、地方裁判所対応もスムーズ。
- 弁護士直通相談:初回無料相談/明確な料金表提示で、安心してご利用いただけます。
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- 早期再スタート支援:免責が許可された後も、信用回復・再建支援までフォローします。
借金・返済でお悩みのあなた、一人で悩まず、まずは専門家の話を聞くことが大きな一歩です。
よくある誤解・Q&A
Q1. 免責を受ければ、全ての借金がゼロになるのですか?
A. ほとんどの破産債権について支払義務を免れますが、税金・養育費・罰金等の非免責債権は免れません。
Q2. 保証人になっていたら、自分も免責されますか?
A. 主債務者の免責は保証人に影響しません。保証人としての請求・担保実行は別途生じる可能性があります。
Q3. ギャンブル・浪費した借金でも免責されますか?
A. 浪費や賭博等は免責不許可事由となる可能性がありますが、必ず免責が否定されるわけではなく、裁量判断もあるため早めに専門家へご相談下さい。
5.まとめ・まずはお気軽にご相談を
本稿では、自己破産における「免責」が何を意味するのか、許可を受けたときの効果・許可を受けられない可能性があるケース・そして仙台・宮城での弁護士相談のメリットを整理しました。
借金問題・返済不能の状況に直面したとき、早期の専門家相談がその後の人生を大きく左右します。結の杜総合法律事務所では、破産手続きの流れ・利用の適否・実際にかかる料金等を、弁護士が丁寧にご説明しております。無理な勧誘は一切しておりません。
まずは 無料相談またはお問い合わせフォーム から、お気軽にご相談ください。お一人で悩まず、安心してお話をお聞かせください。
宮城県仙台市に拠点を置く弁護士法人結の杜総合法律事務所は、2012年の開設以来、地域の皆様の法的ニーズに応えてまいりました。代表の髙橋和聖は、地元宮城で生まれ育ち、弁護士・税理士としての資格を持ち、法律と税務の両面からサポートを提供しています。当事務所は、青葉区五橋に本店、泉区泉中央に支店を構え、2022年10月には東京支店も開設しました。これからも、仙台・宮城の皆様に寄り添い、親しみやすい法律事務所として、質の高いサービスを提供してまいります。
コラム「長期間土地を使用して取得時効が成立?固定資産税を払ってきた土地の所有権を取得したい方へ」
「親の代から土地の固定資産税を払い、自宅を建て生活してきました。ところが最近、その土地の名義が他人のままだと判明しました…。この土地を自分名義にできますか?」
固定資産税を長年支払い、長期にわたり土地を占有してきた場合、『取得時効』により土地の所有権を取得できる可能性があります。
しかし、固定資産税を払っているだけでは自動的に自分の土地になるわけではありません。
法的な要件や、適切な手続を踏む必要があります。
本記事では、
- 取得時効が成立する条件
- 固定資産税を払っているだけで時効取得できる?
- 地主に協力してもらえない場合の手続き
- 逆に所有者から土地明渡しを請求されるケース
などをわかりやすく解説します。
1.取得時効とは?(土地を長く使い続けた人が所有権を得られる制度)
民法162条は、以下の条件で占有者に所有権を認める制度です。
| 占有開始時の状況 | 必要な期間 |
|---|---|
| 善意・無過失(自分の土地だと信じて疑わなかった) | 10年 |
| 悪意又は過失あり(借地の認識等) | 20年 |
※占有は「平穏・公然・所有の意思」が必要
※時効は援用(主張)しないと成立しない(民145)
固定資産税を払っていることは、所有の意思の根拠となる重要な事情です。
2.よくある事例:親の代から固定資産税を払っていた
✅ケース例
- 父が他人名義の土地に自宅を建て、固定資産税も支払っていた
- 子が相続し、自分の名義で固定資産税を支払い続けている
- 土地が自分名義でないことに後で気づいた
この場合、
- 父の占有(借地の可能性)
- 子の占有(自分の土地と信じていた)
を区別して検討します。
父が借地人=他主占有の場合、
父の期間は通算できない可能性がありますが、
相続による占有態様の変更が認められる※最高裁判例もあります
(最判昭46・11・30)。
✅つまり、相続後の占有期間が10年以上あれば、時効取得が認められる可能性があります。
3.地主が協力しない場合の手続き
✅まずは時効取得を援用し、協力を依頼
しかし、多くの場合、地主が任意で登記に応じてくれません。
✅その場合
所有権移転登記手続請求訴訟
を提起し、判決に基づき登記を行います。
✅10年になる前に請求すると不利になる場合があり、タイミング戦略も重要です。
4.逆に地主が土地明渡しを求めてくる場合
地主側は
- 賃貸借契約の存在
- 所有者であること
- 時効成立要件がないこと
を主張します。
固定資産税を払っていたことが、
かえって「賃料代わりだった」と評価される危険も。
✅早めの法的対応・証拠準備が極めて重要です。
5.まとめ:取得時効は専門家サポートが成功の鍵
取得時効は要件・証拠・手続が非常に複雑です。
以下のような場合は、すぐに弁護士にご相談ください。
- 固定資産税は払っているが名義が違う
- 親の代から土地を利用している
- 地主から明渡しを求められた
- 裁判で所有権を確定させたい
結の杜総合法律事務所の強み
- 東北唯一の弁護士法人×税理士法人一体運営
- 代表弁護士は弁護士・税理士のダブルライセンス
- 司法書士・土地家屋調査士とも連携
- 取得時効/明渡し/相続/不動産トラブルに豊富な実績
- 初回相談時に
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「土地の名義が違うかもしれない」「固定資産税を払ってきた土地を自分のものにできる?」
とお悩みの方、ぜひご相談ください。
宮城県仙台市に拠点を置く弁護士法人結の杜総合法律事務所は、2012年の開設以来、地域の皆様の法的ニーズに応えてまいりました。代表の髙橋和聖は、地元宮城で生まれ育ち、弁護士・税理士としての資格を持ち、法律と税務の両面からサポートを提供しています。当事務所は、青葉区五橋に本店、泉区泉中央に支店を構え、2022年10月には東京支店も開設しました。これからも、仙台・宮城の皆様に寄り添い、親しみやすい法律事務所として、質の高いサービスを提供してまいります。
コラム「遺言の撤回・取消しはできるのか?|仙台・宮城の弁護士が詳しく解説」
1 はじめに:遺言は一度作成したら変更できないのか?
「一度作った遺言は、もう二度と取り消せないのでは?」
「公正証書遺言を破り捨てたら撤回になるの?」
このような疑問を持つ方は多くいらっしゃいます。
しかし、遺言は遺言者の最終意思を尊重する制度であり、生前であればいつでも撤回・変更することが可能です。
ただし、撤回や取消しには一定の法的要件や注意点があります。
今回は、仙台・宮城エリアで多数の相続案件を扱う結の杜総合法律事務所が、遺言の撤回・取消しについてわかりやすく解説します。
2 遺言の撤回はいつでも可能(民法1022条)
遺言は、遺言者が亡くなって初めて効力を発生します。
したがって、遺言者は生前であればいつでも自由に撤回・変更が可能です(民法1022条)。
この「撤回」は、遺言の効力が発生する前に、遺言内容を無効にする手続きを指します。
つまり、「新しい遺言を書いて古い内容を取り消す」などの方法で行うことができます。
3 遺言書を破棄した場合の扱い(法定撤回)
遺言の撤回は通常、遺言の方式に従って行いますが、民法は例外的に「法定撤回」として、以下のような場合には自動的に撤回されたものとみなすと定めています。
(1)法定撤回の主なパターン
- 後の遺言が前の遺言と抵触するとき(民法1023条1項)
- 遺言後に、内容と抵触する生前処分を行ったとき(民法1023条2項)
- 遺言者が故意に遺言書を破棄したとき(民法1024条前段)
- 遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したとき(民法1024条後段)
(2)「破棄」とはどんな行為か
破棄とは、遺言書を焼却・切断・判読不能にするような物理的行為を指します。
ただし、文字が多少残っていても、「全体に赤線を引く」など内容を完全に無効化する意思が明確な場合は撤回とみなされます(最高裁平成27年11月20日判決)。
(3)撤回が成立するための条件
破棄による撤回が成立するには、遺言者の故意(撤回の意思)が必要です。
他人が誤って破棄した場合や、偶然破損しただけでは撤回にはなりません。
4 公正証書遺言を破棄した場合は撤回になるのか?
公正証書遺言の原本は公証役場に保管され、遺言者が破棄することはできません。
では、遺言者が手元の正本(写し)を破棄した場合に撤回とみなされるのかが問題になります。
この点について判例はありませんが、通説では次のように解されています。
- 原本は公証役場にあるため、正本を破棄しても遺言の撤回とはならない。
- 一方で、「正本を破棄する行為をもって撤回の意思表示とみなすべき」とする学説も存在。
したがって、公正証書遺言を撤回したい場合は、必ず新たな遺言を作成することが安全です。
5 錯誤・詐欺・強迫による遺言の取消し
(1)取消しが認められる場合
遺言も法律行為の一種です。
そのため、錯誤(思い違い)・詐欺・脅迫によって作成された遺言は、民法95条・96条により取り消すことができます。
取消しが認められると、遺言は遡って無効となります(民法121条)。
(2)取消権を行使できる人
- 遺言者本人(生前に意思能力がある場合)※ただし、否定説もあり。
- 相続人(遺言者死亡後に取消権を相続)
ただし、詐欺や脅迫を行った相続人は民法891条4号の相続欠格事由に該当するため、取消権を行使することはできません。
(3)取消しの方法
取消しの手続は特に定められていませんが、実務上は次のような方法が考えられます。
- 他の相続人が連名で、錯誤・詐欺・強迫により無効である旨を通知
- 「遺言無効確認の訴え」を家庭裁判所に提起する(最判昭47・2・15)
6 まとめ:遺言の撤回・取消しは専門家への相談が重要
遺言の撤回や取消しは、法的要件や証拠関係が複雑で、相続トラブルに発展するリスクが非常に高い分野です。
特に、公正証書遺言や錯誤・詐欺・強迫が関係する場合には、早期に弁護士へ相談することが重要です。
7 結の杜総合法律事務所のご案内(仙台・宮城の遺言・相続専門チーム)
結の杜総合法律事務所は、税理士法人を併設し、弁護士・税理士である髙橋和聖が代表を務めています。
東北エリアで、弁護士法人と税理士法人を一体運営している事務所はほとんどなく、
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ご相談いただける内容
- 遺言書の作成・撤回・取消し
- 公正証書遺言の手続サポート
- 相続放棄・遺産分割協議・遺留分請求
- 相続税申告や税務対策のご相談
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宮城県仙台市に拠点を置く弁護士法人結の杜総合法律事務所は、2012年の開設以来、地域の皆様の法的ニーズに応えてまいりました。代表の髙橋和聖は、地元宮城で生まれ育ち、弁護士・税理士としての資格を持ち、法律と税務の両面からサポートを提供しています。当事務所は、青葉区五橋に本店、泉区泉中央に支店を構え、2022年10月には東京支店も開設しました。これからも、仙台・宮城の皆様に寄り添い、親しみやすい法律事務所として、質の高いサービスを提供してまいります。
