Author Archive

コラム「共有不動産の解消方法・地番整備・境界確定を弁護士が解説」

2025-09-12

1 はじめに

相続財産の中に共有不動産が含まれる場合、共有状態を放置すると将来的にトラブルが起こりやすくなります。例えば、相続を重ねることで共有者が増え、権利関係が複雑化して譲渡や売却が困難になったり、境界や地番が不明確なままでは遺産分割協議や相続税対策が進めにくくなることがあります。

そのため、不動産を相続した段階で、

  • 共有関係の解消
  • 地番の整備
  • 境界の確定

を行っておくことが、相続・遺産分割をスムーズに進めるための有効な対策となります。


2 共有不動産の法律関係

(1)共有とは

複数人が1つの不動産を一定割合で所有することを「共有」といい、各人の割合を「持分」と呼びます。相続発生後の「遺産共有」もこれに含まれます。

ただし、遺産共有の場合は遺産分割協議または家庭裁判所の審判によって解消されるのが原則です。相続開始から10年が経過しない限り、単純に「共有物分割請求」をすることはできません(民法258条の2)。

(2)共有物の利用・管理・処分

  • 各共有者は、自分の持分を自由に処分可能
  • 不動産全体の利用や変更は、原則として共有者全員の同意が必要
  • 建物の賃貸などの「管理行為」は、持分価格の過半数で決定可能

このように、共有不動産は権利関係が複雑で、協力が得られない共有者がいる場合には解消が進まないケースも少なくありません。


3 共有不動産の解消方法

(1)共有物分割協議

共有者間で合意できれば、以下の方法で分割可能です。

  • 現物分割:土地を分筆してそれぞれ単独所有にする
  • 代償分割:一人が取得し、他の共有者に代償金を支払う
  • 換価分割:売却して代金を分け合う

(2)共有物分割請求訴訟

協議がまとまらない場合、裁判所に「共有物分割請求訴訟」を提起できます。判決により現物分割・代償分割・競売による分割が行われます。

(3)所在不明共有者がいる場合

共有者の中に連絡がつかない人がいる場合には、

  • 所在不明共有者の持分取得の裁判
  • 持分譲渡権限付与の裁判

を利用して、共有不動産を処理できる制度があります。相続や売却を進める上で有効な手続きです。


4 地番整備・境界確定の手続き

(1)地番の整備

地番は土地ごとに登記所で付される番号で、所有権や分筆登記の基礎となります。整理されていない場合、相続や売却時にトラブルの原因となるため、早めの整備が望ましいです。

(2)境界確定

隣地所有者との境界が不明確な場合には、

  • 筆界特定制度(法務局に申請して専門家が調査)
  • 境界確定訴訟(裁判所で最終的に確定)

といった手続きを利用して、境界を明確化します。これは将来の土地トラブル予防に直結します。


5 まとめ

  • 共有不動産は放置すると相続トラブル・売却困難・税務上の不利益につながる
  • 解消方法には「協議」「裁判」「所在不明共有者への対応」など複数の制度がある
  • 相続不動産については、地番の整備や境界確定を同時に進めることが重要

6 当事務所へのご相談

弁護士法人結の杜総合法律事務所は、代表弁護士が税理士資格を有し、税理士法人も運営しています。相続・不動産の法律相談だけでなく、相続税・譲渡税など税務面のアドバイスまで一貫してサポート可能です。

さらに、司法書士・土地家屋調査士とも連携しており、

  • 共有物分割請求
  • 境界確定
  • 不動産登記

までワンストップで対応いたします。

「共有不動産を解消したい」「境界を確定したい」「相続トラブルを避けたい」方は、ぜひお気軽にご相談ください。初回相談では手続きの流れ・費用・解決方針を丁寧にご説明いたします。

👉 [相続・遺言の専門ページはこちら]

コラム「死因贈与とは?遺言との違いや税金の注意点を弁護士・税理士が解説」

2025-09-05

1 はじめに

「親が自筆証書遺言を残していたが、押印がなく無効だといわれた。記載されている内容通りに財産を取得できないのか?」
このようなご相談を受けることがあります。

結論から言うと、押印を欠いた遺言は原則無効です。しかし、場合によっては『死因贈与契約』として有効に扱える可能性があります。

本記事では、死因贈与とは何か、遺言との違い、税金上の注意点について、弁護士かつ税理士がわかりやすく解説します。


2 死因贈与と遺言の関係(法的性質)

民法554条では「贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与」=死因贈与と規定されています。
遺贈と似ていますが、厳密には以下の点が異なります。

  • 死因贈与は「生前贈与の一種」であり、贈与者の死亡を始期とする期限付贈与と考えられる。
  • 遺言は死亡まで効力を発しませんが、死因贈与は契約成立時点で受贈者に「期待権」が生じます。

3 死因贈与と遺言の違い(4つの視点)

(1) 撤回の可否

  • 遺言は自由に撤回可能。
  • 死因贈与は契約であるため、原則撤回できません。判例(最判昭58・1・24)でも同様の立場がとられています。

(2) 贈与財産の処分

  • 遺言:死亡まで効力がない → その間の処分は「撤回」とみなされる。
  • 死因贈与:契約成立済み → 抵触する処分は「債務不履行」として扱われる。

(3) 方式

  • 遺言:自筆証書、公正証書など厳格な方式が必要。
  • 死因贈与:口頭でも契約可能。契約書も全文自筆である必要なし。

(4) 効力と承継

  • 死因贈与契約成立時点で受贈者に期待権が発生。
  • 贈与者死亡後、受贈者が既に亡くなっていれば、その相続人が権利を引き継げる。

4 死因贈与と税金(相続税・不動産取得税・登録免許税の違い)

(1) 相続税

  • 共通点:遺贈も死因贈与も、相続税の課税対象になります。

(2) 不動産取得税

  • 遺贈による取得:非課税。
  • 死因贈与による取得:課税対象。仙台高裁判例(平成2年12月25日)でも確認されています。

(3) 登録免許税

  • 相続人への遺贈:相続と同じ税率(不動産価額の1,000分の4)。
  • 死因贈与:相続人であっても高い税率(不動産価額の1,000分の20)が課される。

5 無効な遺言書と死因贈与契約

押印がない、印字が多いなど形式を欠いた遺言書は無効です。
しかし、そこに署名があり、さらに受贈者への口頭申入れと承諾があれば、死因贈与契約が成立したと認められる余地があります。

実務では「遺言が無効=全て諦める」ではなく、死因贈与の可能性を検討することが重要です。


6 まとめ

  • 死因贈与は「契約」であり、遺言と異なり撤回が制限され、税金面でも扱いが変わる。
  • 相続税は共通だが、不動産取得税や登録免許税では大きな差がある。
  • 無効な遺言があっても、死因贈与契約として認められる可能性がある。

7 相続・死因贈与のご相談は結の杜総合法律事務所へ

当事務所は、弁護士法人と税理士法人を併設運営している東北唯一の法律事務所です。
相続・遺言・死因贈与・相続税申告など、法律と税務の両面からワンストップでご相談いただけます。

  • 遺言書の有効性や死因贈与契約の成立可能性を確認したい
  • 不動産の相続や税金(相続税・不動産取得税・登録免許税)が心配
  • 仙台・宮城で相続手続に強い専門家を探している

このようなお悩みをお持ちの方は、まずはお気軽にご相談ください。
初回相談では、弁護士・税理士が直接わかりやすくご説明し、ご納得いただいた上でサポートいたします。

👉 [相続・遺言の専門サイトはこちら]

コラム「賃料増額請求をする方法とは?弁護士が詳しく解説」

2025-08-29

1 はじめに

「所有している土地や建物を貸しているが、近隣の賃料相場が高騰している。固定資産税の負担も増えており、賃借人に家賃の増額を求めたい」
このようなご相談は少なくありません。

本コラムでは、賃料増額請求の法的根拠・具体的な手続き・トラブル防止のポイントについて、借地借家法や判例を踏まえながら分かりやすく解説します。


2 賃料増額請求の法的根拠

土地・建物の賃料は、不増額特約がない限り、経済事情の変動や近隣相場との不均衡を理由に増額請求することが可能です(借地借家法11条1項、32条1項)。

  • 形成権としての賃料増額請求権
    請求は「形成権」として認められており、相手方に請求の意思表示が到達した時点から将来に向かって効力が生じます(最判昭和45年6月4日)。
  • 内容証明郵便の活用
    後日の証拠を残すため、賃料増額請求は内容証明郵便で行うのが一般的です。

3 増額請求の根拠となる事情

賃料増額の主な根拠は以下のとおりです。

  1. 固定資産税などの公租公課の増減
  2. 地価や建物価格などの経済事情の変動
  3. 近隣同種物件の賃料との不相当性

特に固定資産税の上昇は、賃貸人の収益に直結するため重要な要素です。


4 協議が整わない場合の対応

協議がまとまらない場合、賃借人は自ら「相当と認める額」の賃料を支払えば足り、債務不履行にはなりません(借地借家法11条2項、32条2項)。
ただし、供託や差額精算に関しては注意が必要で、後日裁判で増額が認められた場合には差額に年10%の利息が付されます。


5 調停前置主義と訴訟

協議で解決できない場合、いきなり訴訟を起こすことはできず、まず調停の申立てが必要です(民事調停法24条の2)。
その後も決着しないときには訴訟となり、不動産鑑定士による賃料鑑定が行われるのが通常です。


6 実務で多いトラブルと注意点

  • 賃貸人が賃料受領を拒否した場合
    → 賃借人は供託によって責任を免れることができます。
  • 賃貸人が供託金を受け取る場合
    → 適正賃料を認めたと誤解されないよう、「一部受領にすぎない」旨を内容証明で通知するのが望ましいです。
  • 賃借人からの減額請求
    → 減額請求も同様のルールが適用されます。不減額特約があっても、減額請求は可能です。

7 仙台・宮城で賃料増額請求に強い弁護士へ相談を

賃料増額請求は、条文や判例を踏まえた専門的判断が必要であり、不動産鑑定士との連携も欠かせません。

結の杜総合法律事務所では、

  • 賃料増額・減額請求に関するご相談
  • 調停・訴訟の見通しや費用のご説明
  • 不動産鑑定士や司法書士等の他業種とのワンストップ対応

を行っております。まずはお気軽にご相談ください。


まとめ

  • 賃料増額請求は、経済事情や固定資産税・近隣相場の変動を根拠にできる
  • 内容証明郵便で通知し、調停→訴訟へと手続きが進む
  • 実務では供託や差額精算の場面でトラブルが多く、専門家の関与が有効

📞 お問い合わせは結の杜総合法律事務所へ
仙台・宮城での不動産トラブルや賃料増減請求については、まずは初回相談をご利用ください。

『令和7年9月の土曜相談日』のお知らせ

2025-08-26

弁護士法人結の杜総合法律事務所では、原則として毎月3回、土曜日も法律相談を受け付けております(完全予約制)。土曜相談をご希望の方は、直近の営業日までに、お電話またはお問い合わせフォームからお申し込みください【新規のお客様は初回1時間無料

令和7年9月の相談日は次の通りです。

① 9月13日(土)(担当弁護士:原)

② 9月20日(土)(担当弁護士:三塚)

③ 9月27日(土)(担当弁護士:高橋)

お時間については、ご予約時にご希望をお伺いして決めさせていただきます。

相談場所は、原則として五橋本店となります。

(なお、ご予約状況によってはご希望に添えない場合もございますので、予めご了承ください。)

また、当事務所では、直接面談形式の法律相談に加え、「zoom」アプリを利用したテレビ電話形式での法律相談も行っております。こちらもぜひご活用ください(詳しくはこちら)。

皆様のご予約をお待ちしております。

コラム「交通事故の慰謝料はどのように計算される?【弁護士が解説】」

2025-08-22

1 はじめに

交通事故に遭ったときに多くの方が疑問に思うのが「慰謝料はいくらもらえるのか」という点です。
慰謝料には大きく分けて次の3種類があります。

  • 入通院慰謝料(けがで入院・通院した場合の慰謝料)
  • 後遺障害慰謝料(後遺症が残った場合の慰謝料)
  • 死亡慰謝料(亡くなった場合に遺族へ支払われる慰謝料)

これらは、裁判所の基準(赤い本)、自賠責保険の基準、任意保険会社の基準など、複数の基準によって算定されます。
本記事では、それぞれの慰謝料の算定方法をわかりやすく解説します。


2 入通院慰謝料(治療期間に応じて決まる)

入通院慰謝料は、被害者がけがの治療のために入院・通院した日数に応じて計算されます。

  • 裁判基準(赤い本):入通院期間に応じて表があり、むち打ち症などの場合は別基準
  • 自賠責保険基準:1日4,300円(上限あり)
  • 任意保険基準(人身傷害補償保険など):入院1日8,400円、通院1日4,300円など

※注意点として、通院日数が長期・不規則な場合は「実通院日数×3.5倍」で計算されることもあります。


3 後遺障害慰謝料(等級に応じて決まる)

後遺障害が認定された場合、その等級ごとに慰謝料額が決まります。

  • 裁判基準(赤い本):1級=2,800万円、14級=110万円
  • 自賠責基準:1級=1,650万円、14級=32万円
  • 任意保険基準:1級=1,600万円、14級=40万円

※外貌醜状(顔の傷)、嗅覚障害などでは、逸失利益を認めにくい分、慰謝料で調整されることがあります。


4 死亡慰謝料(立場によって異なる)

死亡事故の場合、慰謝料は亡くなった方の立場によって基準額が異なります。

  • 裁判基準:一家の支柱=2,800万円、配偶者・母親=2,400万円、その他=2,000〜2,200万円
  • 自賠責基準:本人分400万円
  • 任意保険基準:一家の支柱=2,000万円など

※扶養家族が多い場合などは、裁判基準で増額が認められることがあります。


5 慰謝料が増額されるケース

慰謝料は、事故や加害者の態度が悪質な場合に増額されることがあります。

  • 飲酒運転・無免許運転・ひき逃げ
  • 加害者が謝罪せず、虚偽の供述をするなど不誠実な対応をした場合
  • 被害者が多数の扶養家族を抱えている場合

実際に、死亡慰謝料が3,600万円認められた判例(東京地裁平成15年判決)などもあります。


6 保険会社の提示額と弁護士の役割

保険会社が提示する慰謝料額は、多くの場合、裁判所基準よりも低額です。
そのため、弁護士が交渉に介入することで慰謝料額を増額できる可能性が高まります。

一度示談書にサインしてしまうと原則取り消せませんので、示談前に弁護士へ相談することを強くおすすめします。


7 まとめ・ご相談について

  • 交通事故の慰謝料は「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」「死亡慰謝料」に分けられる
  • 計算方法は「裁判基準」「自賠責基準」「任意保険基準」で異なる
  • 事故態様や加害者の対応によって慰謝料が増額されることもある
  • 保険会社の提示額は低めなので、弁護士に相談するのが安心

結の杜総合法律事務所では、交通事故に関するご相談を初回無料で承っております。
また、自動車保険に弁護士費用特約が付帯されている場合は、相談料・弁護士費用の自己負担はありません。

示談や慰謝料請求でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。

👉 [交通事故に関するお問い合わせはこちら]

コラム「離婚を考えて別居中でも生活費はもらえる?婚姻費用の請求方法を弁護士が解説」

2025-08-15

1 はじめに

別居中の生活費・教育費は請求できるの?
夫の不貞行為が原因で別居して1年。これまでは自分の貯金で生活してきたけれど、子どもが幼稚園に通い始めて教育費の負担も増え、経済的に限界…。こんな状況で「夫に生活費や教育費を請求できるのか?」と悩む方は少なくありません。

結論から言うと、婚姻費用分担請求として、住居費(アパート代)や生活費、子どもの教育費も含めて請求できます。
ただし、審判で認められるのは請求した時点以降の費用に限られる場合が多いため、早めの行動が重要です。


2 婚姻費用とは?(民法760条)

婚姻費用とは、夫婦と未成熟子が通常の社会生活を送るために必要な費用全般を指します。
具体的には、

  • 衣食住の費用
  • 子どもの教育費
  • 出産費用
  • 医療費
  • 交際費

などが含まれます。

法律上は、民法760条に「夫婦はその資産、収入その他一切の事情を考慮して婚姻から生ずる費用を分担する」と明記されており、別居中であっても婚姻関係が続いている限り、相手に生活費の負担義務があります。


3 別居中でも婚姻費用を請求できる理由

円満な夫婦関係を前提にした規定ではありますが、裁判例では別居状態でも法律上の婚姻関係が続いていれば婚姻費用を請求できるとしています(大阪高決昭33・6・19、東京高決昭42・9・8など)。


4 婚姻費用に含まれる主な費用例

  • 家賃・住宅ローン(賃借料はほぼ確実に含まれる)
  • 子どもの教育費(幼稚園~大学)
  • 出産費用(父子関係を争う場合は例外あり)
  • 医療費
  • 老後のための預金・保険(一定条件下)

5 請求のタイミングと遡及の可否

婚姻費用は原則、請求した時点以降の分が対象となります。過去分を遡って請求できる可能性もありますが、実務上は請求日を基準にするのが一般的です。早く請求するほど受け取れる金額は増える傾向があります。


6 婚姻費用の請求方法

  1. 任意の話し合い
    • 内容を書面化し、公正証書にしておくと強制執行が可能。
  2. 家庭裁判所での調停
    • 話し合いでまとまらない場合に利用。
  3. 審判
    • 調停が不成立の場合、自動的に審判へ移行。

7 婚姻費用の金額算定

家庭裁判所では「標準算定方式」「算定表」を用いて、収入や子どもの年齢・人数から金額を算出します。令和元年には改定版が発表され、より実情に即した金額設定が可能になっています。


8 まとめ

  • 別居中でも生活費・教育費は婚姻費用として請求可能
  • 請求は早いほど有利
  • 話し合いでまとまらない場合は家庭裁判所の調停・審判へ

弁護士によるサポート

結の杜総合法律事務所では、婚姻費用請求や離婚手続きについて、事前に弁護士が丁寧にご説明いたします。費用や進め方に納得いただいた上でお申込みいただけますので、安心してご相談ください。

📞 まずはお気軽にご相談ください
「離婚問題・男女問題」のページはこちら

コラム「破産すると全財産を失うのか?仙台の弁護士が自己破産と自由財産を解説」

2025-08-08

1 はじめに

「自己破産をすると、すべての財産を失ってしまうのでは?」と不安に思っている方は多くいらっしゃいます。
生活するための家財やお金まで取り上げられ、路頭に迷ってしまうのではないか――そんな誤解から、破産手続きをためらう方も少なくありません。

しかし、実際にはそうではありません。
自己破産をしても、99万円までの現金や生活必需品(差押禁止財産)は「自由財産」として手元に残すことができます。さらに、必要に応じて「自由財産拡張」という手続で範囲を広げられる場合もあります。

本記事では、仙台・宮城で多くの破産案件を扱う弁護士が、破産後に残せる財産についてわかりやすく解説します。


2 自己破産と自由財産の基本

自己破産は、借金や債務をゼロにして再スタートを切るための制度です。
ただし、債権者に配当するために一定の財産は処分されますが、法律で守られた自由財産は失いません。

自由財産の例:

  • 99万円までの現金
  • 生活必需品(衣類・寝具・家具・台所用品・食料・燃料など)
  • 実印や位牌、学習用品、義手義足など身体補助具
  • 社会保障給付や一部の給与・退職金

破産法は、単に借金をなくすだけでなく、「経済生活の再生の機会を確保する」ことを目的としており、最低限の生活を守る仕組みが整えられています。


3 99万円までの現金は残せる

民事執行法の改正により、破産しても最大99万円までの現金は手元に残せます(預金は含まれず現金のみ)。
これは、以前の21万円から大幅に引き上げられた額で、生活の再建を支える大きなポイントです。

預金については、現金と同視できる面もありますが、法制度上は自由財産拡張の手続で対応します。


4 その他の差押禁止財産

法律で差押えを禁止されている財産も、自由財産として残せます。
代表例:

  • 衣類・家具・寝具・台所用品
  • 1か月分の食料・燃料
  • 農業・漁業・職人に必要な道具類
  • 実印、礼拝用具、学習道具
  • 義手・義足など身体補助具
  • 一部の給与・年金・退職金

これらは生活や仕事の継続に欠かせないため、破産しても失いません。


5 自由財産拡張とは

現金以外の財産でも、破産者の生活状況に応じて自由財産の範囲を広げられる制度です。
対象となるケース:

  • 預貯金や生命保険の解約返戻金
  • 自動車
  • 退職金債権

たとえば、扶養家族が多い場合や、病気で医療費がかかる場合などには、生活再建のために自由財産拡張が認められる可能性があります。


6 裁判所の運用例(東京地裁)

  • 預貯金残高が20万円以下
  • 生命保険解約返戻金が20万円以下
  • 自動車の処分見込額が20万円以下
  • 居住用家屋の敷金債権
  • 電話加入権
  • 退職金債権の一部

仙台地方裁判所でも独自の運用がありますので、具体的な基準は弁護士に確認することが重要です。

ただし、自由財産の拡張は各裁判所で簡便な処理方法が用いられており、基本的には、現預金や保険等は99万円の範囲であれば保有できると考えて差し支えありません。


7 まとめ:破産=全財産喪失ではない

自己破産をしても、生活に必要な財産は守られます。
正しい知識を持つことで、不安や誤解を減らし、早期の生活再建につなげられます。


仙台・宮城で自己破産のご相談は結の杜総合法律事務所へ

当事務所では、自己破産の流れ、費用、適用の可否を弁護士が丁寧にご説明します。
無理な勧誘は一切なく、安心してご相談いただけます。

まずはお気軽にお問い合わせください。
→ [法人破産(会社破産)をお考えの方はこちら]

コラム「【相続対策×生命保険】相続税の節税に効果的な生命保険の活用法を弁護士・税理士が解説!」

2025-08-01

1.生命保険は相続対策に有効!その理由とは?

相続税対策として近年注目されているのが、生命保険の活用です。
被相続人(亡くなられた方)が保険料を支払い、相続人を受取人とした場合、生命保険金には一定額の非課税枠が認められ、相続税の節税に大きな効果があります。

ただし、契約者・被保険者・受取人の組み合わせによって課税される税金の種類が異なるため、加入前に正しい設計が必要です。
また、生命保険金は民法上の「相続財産」には含まれませんが、相続税法上は課税対象となるなど、法律上の取り扱いも注意すべき点があります。

※生命保険が遺産分割の対象になるかどうかについては、以下のコラムもご覧ください:
👉 「生命保険金は遺産分割の対象?相続財産に含まれるかを弁護士が解説」


2.【節税効果あり】生命保険の非課税枠とは?

2-1.非課税となる条件と金額

相続人が死亡保険金を受け取る場合、以下の計算式によって算出される金額までは非課税となります:

非課税限度額=500万円 × 法定相続人の数

※相続放棄した人や相続権を失った人はカウントされません。

この非課税枠を超えた部分にのみ相続税が課税されます。保険金の全額が非課税になるケースもあるため、相続税の節税に非常に有効です。

2-2.非課税枠の配分のルール

相続人ごとの非課税適用額は、以下のように按分して計算されます:

非課税限度額 × 各相続人の受取保険金の額 ÷ 相続人全体の受取保険金の合計額

2-3.注意点:第三者を受取人にすると非課税にならない

例えば、内縁の妻や公益法人など、法定相続人以外を受取人に指定した場合には、非課税枠は適用されません。さらに、相続税2割加算の対象となることもありますので注意が必要です。


3.生命保険にかかる税金の違いを整理

契約形態によって課される税金は以下のように変わります(被相続人は甲とします)。

保険料負担者被保険者保険金受取人課税される税金
① 甲相続税
② 乙所得税(※一時所得)
③ 乙贈与税
④ 甲相続税(契約権)
  • 所得税:保険料を負担した人と受取人が同一の場合。
  • 贈与税:保険料負担者・被保険者・受取人がすべて異なる場合。
  • 相続税:保険料負担者が亡くなり、その契約権自体が相続された場合など。

4.【事例解説】生命保険による相続税の節税効果とは?

4-1.事例紹介

  • 被相続人:父
  • 相続人:子5人(法定相続人)
  • 財産:保険金3,000万円+自宅5,000万円+その他7,000万円(計1億5,000万円)

※保険加入により預貯金から3,000万円を支出

4-2.保険あり・なしの比較

区分相続税額
保険を活用した場合725万円
保険を活用しなかった場合1,100万円

差額:375万円の節税効果!

生命保険を活用することで、現金で相続するよりも非課税枠が適用される分、手元に残る財産が大きくなります。


5.結の杜総合法律事務所なら、相続対策から相続税申告まで一貫対応!

結の杜総合法律事務所は、東北地方で唯一、弁護士法人と税理士法人を一体的に運営しています。代表の髙橋は弁護士・税理士の両資格を有し、法律と税務の両面からワンストップでご対応が可能です。

  • 相続税の節税プランニング
  • 保険契約を活用した相続対策
  • 相続税申告や遺産分割のサポート
  • 税務署からの問い合わせ対応

など、幅広く対応しています。

初回相談は無料です。無理な勧誘は一切行っておりませんので、相続に関して少しでも不安があれば、ぜひお気軽にご相談ください。

👉 相続・遺言専門サイトはこちら

コラム「従業員を懲戒処分するには?手続や注意点を弁護士が解説」

2025-07-25

「従業員に非違行為が見られる場合、会社として懲戒処分を行いたいと考えています。どのような手続を踏むべきでしょうか?」
このようなお悩みをお持ちの企業・事業主の方は多くいらっしゃいます。

この記事では、従業員を懲戒処分するための手続やポイント、関連する判例などについて、弁護士がわかりやすく解説します。


1.懲戒処分には「就業規則」が必要です

従業員を懲戒処分するには、まず就業規則に懲戒の根拠が明記されていることが必要です。具体的には、次の2点が明示されている必要があります。

  • 懲戒の種類(けん責、減給、出勤停止、懲戒解雇など)
  • 懲戒の事由(どのような行為が懲戒の対象となるか)

就業規則上の「限定列挙」が重要

就業規則に定められた懲戒事由は、限定列挙と解されるのが一般的です。すなわち、明記された事由に該当しなければ、原則として懲戒できません。

実務上、「その他これらに準じる行為」などの包括条項を設けているケースもありますが、これは罪刑法定主義に類似する原則に照らして好ましくないとされています。
判例(最判昭和54年10月30日〔国鉄札幌運転区事件〕)も、懲戒処分は就業規則に基づいて行う必要があることを明確にしています。

就業規則の整備は経営リスク対策

中小企業では、就業規則が不十分であるケースも少なくありません。特に懲戒事由が曖昧であったり数が少ない場合、懲戒処分が無効とされるリスクがあります。
懲戒処分の正当性を確保するためにも、就業規則の見直しや整備は非常に重要です。


2.懲戒処分には「相当性」が必要です

労働契約法第15条では、懲戒処分が「社会通念上相当と認められない場合」は無効とされます。つまり、非違行為の内容に対して処分が重すぎる場合、無効と判断される可能性があるのです。

判例にみる「相当性」の判断

  • 懲戒解雇が無効とされた例:
    • ネスレ日本事件(最判平成18年10月6日)
    • 三井記念病院事件(東京地判平成22年2月9日)
    • 群馬大学事件(前橋地判平成29年10月4日)
  • 懲戒解雇が有効とされた例:
    • みずほ銀行事件(東京地判令和2年1月29日)

懲戒処分の有効性は、非違行為の内容、従業員の勤務状況、過去の処分歴など多角的に判断されます。


3.従来黙認していた行為を処分する場合の注意点

過去に同様の行為を黙認していたにもかかわらず、急に懲戒処分を行うことは「公平性」や「平等取扱い原則」に反するとされ、無効となる可能性があります。

このような場合には、事前に注意喚起・警告を行い、ルールを明確にすることが必要です。


4.懲戒処分の前に「弁明の機会」を与えることが重要

懲戒処分の前には、従業員に対して十分な弁明の機会を与えることが必要不可欠です。

  • 懲戒委員会や労働組合との協議を必要とする旨が就業規則に記載されている場合は、その定めに従う必要があります。
  • 就業規則に明記がない場合でも、最低限の手続保障として、本人への聞き取り・意見聴取を行うべきです。

裁判例:テトラ・コミュニケーション事件(東京地判令和3年9月7日)では、弁明の機会を与えなかったけん責処分が無効とされ、慰謝料等の支払が命じられました。


5.同じ行為について繰り返し懲戒処分はできません

懲戒処分には、「一事不再理」の原則(同じ行為について再度処分することは不可)が適用されると解されています。
刑事罰と同様、懲戒処分も「制裁」である以上、同一の事実に対して複数回の処分を科すことはできません。

ただし、懲戒処分歴をもとに評価制度上の降格処分を行うことは、この原則に違反しません(最判平成27年2月26日:海遊館事件)。


まとめ|懲戒処分を行う際の注意点

ポイント内容
就業規則の整備懲戒の種類と事由を具体的に明記
相当性の確保行為の内容と処分の重さのバランス
弁明の機会付与手続の適正を確保
同様の過去事例との比較公平性・平等原則の担保
二重処罰の禁止一つの行為に対する複数処分の回避

労働問題・懲戒処分でお困りの方は弁護士へご相談ください

結の杜総合法律事務所では、就業規則の整備、懲戒処分の適法性判断、労使トラブル対応など、企業の労務管理を幅広くサポートしております。

また、顧問契約を締結していただくことで、継続的な労務リスク対策を弁護士がサポートいたします。
初回相談では無理な勧誘等は一切行っておりませんので、まずはお気軽にご相談ください。

👉労働問題について詳しくはこちら
👉顧問弁護士サービスについてはこちら

『令和7年8月の土曜相談日』のお知らせ

2025-07-24

弁護士法人結の杜総合法律事務所では、原則として毎月3回、土曜日も法律相談を受け付けております(完全予約制)。土曜相談をご希望の方は、直近の営業日までに、お電話またはお問い合わせフォームからお申し込みください【新規のお客様は初回1時間無料

令和7年8月の相談日は次の通りです。

① 8月 2日(土)(担当弁護士:三塚)

② 8月23日(土)(担当弁護士:原)

③ 8月30日(土)(担当弁護士:高橋)

お時間については、ご予約時にご希望をお伺いして決めさせていただきます。

相談場所は、原則として五橋本店となります。

(なお、ご予約状況によってはご希望に添えない場合もございますので、予めご了承ください。)

また、当事務所では、直接面談形式の法律相談に加え、「zoom」アプリを利用したテレビ電話形式での法律相談も行っております。こちらもぜひご活用ください(詳しくはこちら)。

皆様のご予約をお待ちしております。

« Older Entries

keyboard_arrow_up

05055279898 問い合わせバナー 無料法律相談について