ご相談の多い離婚の事例(職業別)

高額所得者の離婚

高額所得者は、年収も高く、預貯金、金融資産のほか、住宅ローンなどの負債を含む資産を保有していることが多いため、交渉次第で財産分与の金額が大きく変わる場合があります。

また、養育費や婚姻費用は、年収を基礎に決められるため、高額になる傾向にあります。

そのため、高額所得者の離婚では、各金額がいくらになるのかを見極めることが重要です。

親権

親権者を父母いずれにするかが争われた場合、家庭裁判所は、乳幼児における母性優先の原則、継続性の原則、子の意思の尊重、兄弟姉妹不分離の原則などの様々な判断基準、事情を総合的に考慮し、「子の利益と福祉」の観点から判断します。

養育費・婚姻費用

養育費は、離婚後の子どもの養育にかかる費用のことであり、婚姻費用とは、別居後離婚成立までの配偶者と子どもの生活費のことです。

養育費と婚姻費用は、裁判所が公開している「養育費・婚姻費用算定表」を参考に算定されるのが一般的です。

ただし、養育費は、特別な事情がある場合、例えば子どもが私立学校へ進学することを了承している場合などは増額事由として認められることがあります。

なお、高額所得者の場合、算定表の年収上限(年収2000万円)を超えてしまうこともあります。

また、養育費をいつまで支払うのかについては、様々な定め方がありますが、「満20歳に達する日の属する月まで」とされるケースが多いです(成人年齢が18歳とされた現在でも同様です)。

しかし、大学進学など十分な教育をお考えであれば、養育費の金額や支払期間だけでなく、進学などに要する特別な費用の負担についても、しっかりと決めておく必要があります。

財産分与

財産分与は、夫婦双方の財産から特有財産を除いたものが対象となります。

特有財産とは、夫婦が共同で形成したものではない財産、例えば婚姻前から有していた財産や、相続や贈与で取得した財産を指しますが、これはそのような財産であることを明確に主張できるものでなければなりません。

また、住宅ローンなどの負債も財産分与の算定にあたって考慮の対象となります。住宅ローンのある家などの不動産の財産分与は争いになりやすいので注意が必要です。

財産分与の割合は、原則2分の1ずつ(清算的財産分与)とされていますが、財産形成における貢献度(寄与度)によっては割合が修正されることがあります。

もっとも、夫婦で財産分与に関する合意が成立すればそれが優先されますが、高額所得者の場合、保有資産も多く、交渉によっては財産分与の割合が大きく変わることもあります。

慰謝料

慰謝料は、概ね100万~300万円の範囲で認められることが一般的です。

ただし、慰謝料は、「精神的苦痛に対する損害賠償」として相手方に請求する(請求される)ものであり、「離婚を最初に申し入れたのは相手方だから」とか、性格の不一致や価値観の違いという理由だけでは請求することは難しく、不貞行為、DVやモラハラなどが原因で離婚に至るような場合でなければ請求できません。

慰謝料の有無、金額は、離婚原因の内容や婚姻期間、子の有無、相手方の社会的地位や資力などの事情や状況で変わりますので、見込まれる金額がいくらになるのか、弁護士にご相談されることをお勧めします。

熟年離婚

熟年離婚の場合、当事者の方が不安になるのは、離婚後(老後)、「不自由なく生活できるか」「経済的に自立できるか」という点でしょう。

慰謝料の請求の可否は離婚原因にもよりますので、必ず支払われるものとは言えませんが、財産分与と年金分割は正当に受け取るべきものです。

熟年離婚や高齢離婚の場合、婚姻生活が長かったことから夫婦が感情的になることも多いため、まずは、弁護士に客観的かつ冷静な判断、アドバイスを求めるのがよいでしょう。

財産分与

夫婦が離婚する場合の財産分与(清算的財産分与)割合は、原則として2分の1ずつです。

婚姻後に築いた財産(預貯金、不動産、動産、有価証券など)だけではなく、住宅ローンや借金などの負債も財産分与の際に考慮の対象となります。

また、退職金については、仮にまだ支給されておらず、将来支給されるべきものであったとしても、その退職金を受け取ることができる蓋然性が高い場合には、その退職金のうち、夫婦の婚姻期間に対応する部分は、財産分与の対象になります。

ただし、特有財産、すなわち婚姻前から保有していた財産、婚姻後でも相続・贈与によって取得した財産、別居後に築いた財産は、財産分与の対象から除外されます。

年金分割

年金分割は、離婚する際に婚姻期間中の厚生年金(共済年金の組合員であった期間を含む)の納付実績を夫婦で分割することです。分割の割合は、通常0.5、つまり半分です。「合意分割制度」と「3号分割制度」があり、請求期限は原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内とされており、離婚と同時に請求することが多いです。

医師の離婚

医師は、医師としての資質や適正、その有する専門的知識、技術を活用することにより、高額の収入を得て、資産を形成しています。

さらに、開業医として医療法人を経営している場合などは、そのような医師としての才覚はもとより、その経営手腕によって資産形成がなされたと評価されることも多いでしょう。

そのため、原則2分の1ずつとされる財産分与(清算的財産分与)において、例外が認められることがあります。

よって、医師の離婚は、資産形成への貢献度をいかに主張立証できるかがポイントになってきます。

財産分与

医師は、一般的なサラリーマンなどの夫婦と比べて年収も高い傾向にあり、保有資産も多いため、財産分与対象財産の範囲や寄与割合について争われることが多いのが実情です。

開業医として医療法人を経営している場合などは、例えば、不動産が病院と住居が一緒になった医院併用住宅であったり、また、配偶者が医療法人の理事として報酬を得ている一方で、医療法人への資金を出資していたり、余剰資産を分散投資していたりするなど、法人資産と個人資産が混在していることも多く、資産の評価や財産分与の算定が複雑になる傾向があります。

そのため、離婚にあたっては、弁護士などに依頼して、財産調査や立証するための証拠の収集を十分に行い、準備を整えた上で、夫婦共有財産の範囲について明確に主張・立証していくことが重要となります。

また、原則として2分の1とされている寄与割合も、医師の場合は修正される可能性があります。実際の裁判例においても、医師である夫の寄与割合を6割としたものがあります。

慰謝料

慰謝料は、必ず生じるものではありません。たとえば、不貞行為、DVやモラハラなどが原因で離婚に至るような場合は、相手方に請求する、あるいは請求される可能性がありますが、性格の不一致や価値観の違いだけでは請求することはできません。

また、慰謝料を請求できる場合でも、その金額は、離婚原因の具体的内容や婚姻期間などの事情によって変わりますので、その金額はどの程度が見込まれるのか、弁護士にご相談されることをおすすめします。

養育費・婚姻費用

養育費や婚姻費用の金額は、裁判所が公開している「養育費・婚姻費用算定表」を参考に算定されますが、医師の場合、算定表の年収上限(年収2000万円)を超えてしまうことも多いため、弁護士によるサポートが必要です。

配偶者が医療法人の役員やスタッフ

開業医として医療法人を経営している場合であって、配偶者が医療法人の理事などの役員として報酬を得ている場合や、事務スタッフとして雇用契約を結んでいる場合は、そちらの処理も必要になってきます。

会社経営者の離婚

会社経営者は、役員報酬も高額であるうえに、保有資産(貴金属や美術品、高級外車などの動産、株式などの有価証券)も多いことから、財産分与で争いとなることも多いです。

また、個人事業主の場合、事業資産(土地、建物、口座など)であっても、婚姻後に築いた財産は基本的に財産分与の対象となります。名義が個人のものだからです。

他方、法人経営者の場合、法人名義の財産については、原則として財産分与の対象とはなりませんが、経営者個人として法人に貸し付けていたり(貸付金)、法人の株式・出資持分を保有している場合には、それも個人の財産となりますので、財産分与の対象となります。

そのため、非上場の会社の場合には、自社株の株式評価額を算出する必要が生じます。

財産分与の割合

財産分与の割合は、原則として2分の1ずつですが、法人経営者の場合、経営者としての才覚、経営手腕によって資産形成がなされたと評価されることがあるため、その割合が変わることもあり得ます。

有価証券(株式等)

会社経営者が有している自社株式などの有価証券についても、財産分与の対象となります。

また、夫婦がそれぞれ自社株式を保有している場合、その保有する株式は財産分与の対象となりますが、株式は、会社の経営権を左右するものであり、今後の会社経営にも関わりますので、このような場合は特に計画的かつ戦略的な交渉が求められます。

配偶者が取締役などの役員の場合

取締役などの役員に対し退任を求める場合、通常は株主総会決議が必要となります。

そして、役員である配偶者に対し、離婚に伴い退任請求を行う場合、正当な理由がない取締役の解任であると主張され、損害賠償を請求されるおそれがあります。

そのため、離婚問題が経営権争いに発展するような最悪な事態を避けるためにも、弁護士と慎重かつ戦略的な対応が必要になります。

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