コラム「【保存版】AIが作成した契約書を弁護士はどこまでチェックする?企業を守る「契約書レビュー」のポイントを解説(第3回)」

はじめに

これまでのコラムでは、生成AIを利用した契約書作成のメリットとリスク、そしてAIを安全に活用するためのポイントについて解説しました。

ここまでお読みいただいた方の中には、

「AIで契約書を作った後、弁護士は何をチェックしているのだろう?」

という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

「契約書をチェックする」と聞くと、誤字脱字や法律用語の誤りを修正する作業をイメージされる方も少なくありません。

しかし、実際の契約書レビューはそれだけではありません。

弁護士は、「この契約によって将来どのようなトラブルが起こり得るか」を予測し、そのリスクを契約書によってできる限り防ぐという視点で内容を確認します。

本コラムでは、AIが作成した契約書を弁護士がレビューする際に、特に重視しているポイントをご紹介します。


契約書レビューとは「会社を守る設計図」を作ること

契約書レビューの目的は、「法律的に正しい契約書」を作ることではありません。

本当の目的は、

  • 将来の紛争を予防すること
  • 自社が過大な責任を負わないようにすること
  • トラブルが起きても不利にならないよう備えること

です。

AIは一般的な契約書を作成できますが、「どこまでリスクを負うべきか」「どの条件なら契約を締結すべきか」といった経営判断までは行えません。

そのため、契約書レビューでは、会社の立場や業種、取引内容を踏まえた調整が重要になります。


チェックポイント① 契約の目的と実際の取引内容が一致しているか

AIは入力された内容をもとに契約書を作成します。

しかし、現実の取引では、

  • 口頭で合意している内容
  • 長年の取引慣行
  • メールで追加合意した事項

などが存在することがあります。

契約書にこれらが反映されていなければ、トラブル時に「契約書に書いていない」と主張されるおそれがあります。

弁護士は、契約書と実際の取引内容にズレがないかを確認します。


チェックポイント② 責任の範囲は適切か

契約書の中でも特に重要なのが損害賠償条項です。

例えば、

  • 契約金額100万円の取引なのに、責任は無制限
  • 間接損害や逸失利益まで賠償対象
  • 故意・重過失以外でも重い責任を負う

といった内容になっていれば、企業にとって大きなリスクとなります。

弁護士は、契約の性質や金額、業界慣行を踏まえ、責任の範囲が適切かを確認します。


チェックポイント③ 契約解除の条件は明確か

契約解除条項は、紛争時に最も問題となりやすい条項の一つです。

例えば、

  • 相手方が代金を支払わない
  • 納期を守らない
  • 情報漏えいがあった

このような場合に、どのような手続で契約を解除できるのかが曖昧だと、契約関係を終了させること自体が難しくなることがあります。

解除事由や催告の要否などは、実際の運用を想定して定める必要があります。


チェックポイント④ 知的財産権は守られているか

IT開発、ホームページ制作、デザイン、動画制作などでは、成果物の権利関係が重要です。

AIが作成した契約書では、

  • 著作権の帰属
  • 利用範囲
  • 改変の可否

などが十分に整理されていないことがあります。

成果物を自由に利用できない、あるいは将来の事業展開に支障を来すことがないよう、契約目的に応じた条項が必要です。


チェックポイント⑤ 代金を確実に回収できるか

契約書には「いくら支払うか」だけではなく、

  • 支払期限
  • 請求方法
  • 遅延損害金
  • 分割払いの条件
  • 契約解除後の精算方法

なども重要です。

代金回収の場面を想定した条項になっているかどうかで、実際の回収可能性は大きく変わります。


チェックポイント⑥ 秘密情報や個人情報は十分に保護されているか

営業秘密や顧客情報を扱う企業では、秘密保持条項の内容が非常に重要です。

弁護士は、

  • 秘密情報の定義
  • 開示できる場合
  • 契約終了後の義務
  • 個人情報保護法との整合性

などを確認し、企業の情報資産を守るための内容になっているかを検討します。


AIでは判断が難しい「経営判断」の視点

AIは「一般的な契約書」を作ることは得意です。

しかし、例えば次のような判断は、企業ごとに異なります。

  • 新規取引先だから慎重な条件にする
  • 長年の取引先なので柔軟な条件にする
  • 将来の取引拡大を見据えて譲歩する
  • 相手方との交渉力を踏まえて条件を調整する

こうした判断には、法律だけでなく経営や取引実務の視点も欠かせません。


AIと弁護士を組み合わせることが最も効率的

生成AIは、契約書作成の時間を大幅に短縮できます。

一方で、重要な契約については、人による最終確認が不可欠です。

おすすめしたいのは、

  1. AIで契約書のたたき台を作成する
  2. 社内で内容を確認する
  3. 重要な契約は弁護士がレビューする

という流れです。

これにより、効率性と安全性の両立が期待できます。


よくある質問(Q&A)

Q すべての契約書を弁護士に見てもらう必要がありますか?

必ずしもすべてではありません。しかし、新規取引、大型案件、継続的な取引、知的財産権が関係する契約などは、弁護士による確認をおすすめします。

Q AIで作成した契約書でもレビューしてもらえますか?

もちろん可能です。AIで作成した契約書を前提に、企業の実情や取引内容に合わせて修正・補足し、実務で使える契約書へと整えます。

Q 契約書レビューはトラブル防止につながりますか?

はい。契約書レビューは、紛争が起きてから対応するのではなく、「紛争を起こさないため」の予防法務です。将来のリスクを見据えて契約内容を整えることは、企業経営にとって大きな意味があります。


まとめ

契約書レビューとは、単に文章を修正する作業ではありません。

将来起こり得る紛争を予測し、会社の利益を守るために契約内容を設計することが、その本質です。

AIは契約書作成を効率化する非常に便利なツールですが、会社ごとの事情や経営判断まで反映することはできません。

だからこそ、AIを上手に活用しながら、重要な契約については弁護士が最終確認を行うことで、企業の法的リスクを大きく減らすことができます。

結の杜総合法律事務所へご相談ください

結の杜総合法律事務所では、AIを利用して作成した契約書のレビュー、契約書の新規作成・修正、継続的な企業法務支援(顧問契約)まで幅広く対応しています。

また、代表弁護士は税理士資格を有し、税理士事務所を併設しているため、契約内容だけでなく税務上の影響も踏まえた総合的なアドバイスが可能です。

「AIを活用しながらも、会社をしっかり守りたい」とお考えの企業の皆さまは、ぜひお気軽にご相談ください。


次回予告

第4回では、「中小企業が整備しておきたいAI利用規程とは?」をテーマに、AI時代に求められる社内ルールや情報管理体制、実務で押さえておきたいポイントを分かりやすく解説します。

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